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花の香りに酔う如く
第6章 クチナシの誘惑②〜律
翌朝、いつものようにお勤めをしてキッチンに行くと、
だいぶ体調が良さそうな沙羅ちゃんがフレンチトーストを作っていた。

リビングや廊下まで、
甘い香りがしていて、
住職が、
「なんか、可愛らしい匂いがするな」と笑う。


僕はどんな顔して沙羅ちゃんを見たら良いか変わらなくて、
少しぶっきらぼうな顔で、
「おはよう」と言った。

沙羅ちゃんは少し紅い顔で、
「おはようございます」とぎこちない様子で言った。


「あ。
そんなに甘くしてないので、
普通にベーコンエッグと食べてくださいね?」と、
僕と住職に言うと、
自分のお皿のにはメープルシロップを掛けていた。


「ベーコンエッグは食べないの?」と訊くと、

「まだ、食欲があんまりなくて」と言うので、

「やっぱり、病院…」と言い掛けると、

「大丈夫です。
律お兄様、心配し過ぎです」と笑う。



昼食の後、
食材を買ってくると住職に行って、
2人で車で出掛ける。


取り敢えず、銀座に向かって、

「何処にする?
ティファニーかな?
それともカルティエ?」と言うと、

「えっ?
そんなにスゴいものは…。
お兄様…じゃなくて、律さん、
何でも良いの?」と言うので、

「勿論、何でも良いよ。
指輪とか、ネックレスとかにしようかと思ったんだけど。
記念だし…」と言うけど、

「えっと。
毎日持ち歩いて使うモノにしても良いですか?」と言って、
僕の手を引いてキラキラしたお店の前に連れて行くと、

「ここのお店のが欲しいの。
高いかな?
良いのかな?」と言う。


「欲しいものがあるなら、
遠慮しないで?」と言って、
逆に僕の方が沙羅ちゃんの手を引いて、
自動ドアの中に入った。


なんていうか、
目が眩むほどキラキラしていて、
場違いな気がして立ち止まってしまった。


「いらっしゃいませ」と、
綺麗な女性店員が、
作務衣姿の僕と、
シンプルなワンピースの沙羅ちゃんを交互に見た。



…スーツで来れば良かったかなと、
内心、冷や汗をかいてしまった。
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