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花の香りに酔う如く
第7章 金木犀の香りほどの不安①〜沙羅

着物はこちらに持ってきてないので、
部屋着のワンピースに帯紐をベルトのように巻いて、
帛紗を腰につける。
お茶の前に、頂き物の和菓子を帛紗に載せて出した。
住職様が動かなくて良いようにと、
律さんが住職様に渡してくれて、
自分の分も取る。
先にお菓子を食べて貰っている間に、
丁寧に薄茶を点てて、お出しする。
お茶碗は2つだけ洗っていたので、
取り敢えず、2人に出すと、
住職様が、
「美味しいな。
久し振りにこんなに美味しい抹茶を飲んだよ?」と笑う。
いやいや。
そんなことはないハズで、
住職はお呼ばれもされるし、
茶会なんかにも招かれることがあるだろうし。
律さんは、生真面目な顔で飲んで、
茶碗をお作法通りに回して返した。
私はそのお茶碗をお湯で洗って茶巾で拭いて、
もう一服点てると、
お相伴させて貰った。
「着物だったら、
もっと可愛いだろうな」と住職様が言うので、
「着物はこちらに持って来てなくて…」と答えると、
「そうだ。
奥の部屋に、着物、あるよ?」と言って、
立ち上がると、
「おいで?」と言った。
そこには、立派な対の桐箪笥が置かれていて、
大きな姿見や衣桁なんかもあった。
「女房が着物をここに置いてて、
着替えたりしてたんだよ。
毎日、ここで着替えていた。
寝る時は浴衣みたいなのだったけど、
本当に毎日、着物だったな。
沙羅ちゃん、良かったら時々、着て欲しいな。
こっちの箪笥のは、多分茶会用の良い着物だよ。
勿体ないって、あんまり着なかったみたいだ。
普段着は、こっちの普通の箪笥に入れてるって言ってたから、
それは古着みたいで嫌だろうから、
良い方の着物、着て欲しい。
背の高さも体型も、似てるから」と言われて、
少し戸惑ってしまう。
「あの。
そんなに大切なものを私なんかが…?」
「沙羅ちゃんだから、着て欲しいんだよ。
着物なんて、
着てあげない方が可哀想じゃないか」と言われて、
私は頷いてしまった。
「もうすぐ11月だから、
畳を替えて、炉も開いておこうかな?
出入りの業者に連絡しておくよ。
沙羅ちゃんにお茶、点てて貰って飲んでたら、
若返りそうだよ」と、
嬉しそうに笑う住職様は、
なんだか可愛らしく思えた。
部屋着のワンピースに帯紐をベルトのように巻いて、
帛紗を腰につける。
お茶の前に、頂き物の和菓子を帛紗に載せて出した。
住職様が動かなくて良いようにと、
律さんが住職様に渡してくれて、
自分の分も取る。
先にお菓子を食べて貰っている間に、
丁寧に薄茶を点てて、お出しする。
お茶碗は2つだけ洗っていたので、
取り敢えず、2人に出すと、
住職様が、
「美味しいな。
久し振りにこんなに美味しい抹茶を飲んだよ?」と笑う。
いやいや。
そんなことはないハズで、
住職はお呼ばれもされるし、
茶会なんかにも招かれることがあるだろうし。
律さんは、生真面目な顔で飲んで、
茶碗をお作法通りに回して返した。
私はそのお茶碗をお湯で洗って茶巾で拭いて、
もう一服点てると、
お相伴させて貰った。
「着物だったら、
もっと可愛いだろうな」と住職様が言うので、
「着物はこちらに持って来てなくて…」と答えると、
「そうだ。
奥の部屋に、着物、あるよ?」と言って、
立ち上がると、
「おいで?」と言った。
そこには、立派な対の桐箪笥が置かれていて、
大きな姿見や衣桁なんかもあった。
「女房が着物をここに置いてて、
着替えたりしてたんだよ。
毎日、ここで着替えていた。
寝る時は浴衣みたいなのだったけど、
本当に毎日、着物だったな。
沙羅ちゃん、良かったら時々、着て欲しいな。
こっちの箪笥のは、多分茶会用の良い着物だよ。
勿体ないって、あんまり着なかったみたいだ。
普段着は、こっちの普通の箪笥に入れてるって言ってたから、
それは古着みたいで嫌だろうから、
良い方の着物、着て欲しい。
背の高さも体型も、似てるから」と言われて、
少し戸惑ってしまう。
「あの。
そんなに大切なものを私なんかが…?」
「沙羅ちゃんだから、着て欲しいんだよ。
着物なんて、
着てあげない方が可哀想じゃないか」と言われて、
私は頷いてしまった。
「もうすぐ11月だから、
畳を替えて、炉も開いておこうかな?
出入りの業者に連絡しておくよ。
沙羅ちゃんにお茶、点てて貰って飲んでたら、
若返りそうだよ」と、
嬉しそうに笑う住職様は、
なんだか可愛らしく思えた。

