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花の香りに酔う如く
第7章 金木犀の香りほどの不安①〜沙羅

「煎茶だけかと思ったら、
お裏さんもやっていたんだね?」と住職様が言う。
ほら。
やっぱり、お茶会とかにお呼ばれしてるのが判る。
それから、時々、
のんびりと住職様と律さんにお茶を点てるようになった。
大学が早く終わる日は、
本当にお着物をお借りして着てみると、
住職様はとても喜んでくれて、
律さんはちょっと眩しそうな顔で私を見て顔を逸らしてしまう。
良い方の着物と言っていた箪笥の中の着物は、
殆どが仕付け糸がついたままのもので、
地味なものから華やかななものまで、
本当に贅を尽くした上品なものばかりだった。
着古していたという普段着のお着物の方が、
身体に馴染んで着心地が良かったので、
そちらを着ると住職様が涙ぐんでしまうこともあった。
「えっ?」と思って、
悪いことをしてしまったのかと思うと、
「いや。
若い頃の女房を思い出してな…」と、
頭を掻いて笑うので、
かえって申し訳ないのかなと心配すると、
「懐かしいよ。
沙羅ちゃんが嫌でないなら、
是非、着てやってくれ」と言われて、
ホッとした。
本当に茶室の畳を全て新しくして、
炉を開いてくれた。
真新しい畳の香りが嬉しくて、
思わずお行儀悪く大の字になってのんびりその香りを吸っていたら、
律さんに見られてしまった。
「えっ?
どうしたの?
沙羅ちゃん?」と言われて、
慌てて正座すると、
律さんが声を上げて笑う。
私は口を尖らせて、
「笑わなくても良いでしょ?
ほら。
横になるとね。
畳の香りが凄く気持ち良いんですよ?」と言って、
もう一度寝転んで、
大きく伸びをして息を吸った。
クスクス笑いながら律さんも同じことをしてから、
手を伸ばして私の手を握ってくれる。
そうだ!
あのこと、訊かなくちゃ!
そう思って、
律さんにそっと訊いてみた。
お裏さんもやっていたんだね?」と住職様が言う。
ほら。
やっぱり、お茶会とかにお呼ばれしてるのが判る。
それから、時々、
のんびりと住職様と律さんにお茶を点てるようになった。
大学が早く終わる日は、
本当にお着物をお借りして着てみると、
住職様はとても喜んでくれて、
律さんはちょっと眩しそうな顔で私を見て顔を逸らしてしまう。
良い方の着物と言っていた箪笥の中の着物は、
殆どが仕付け糸がついたままのもので、
地味なものから華やかななものまで、
本当に贅を尽くした上品なものばかりだった。
着古していたという普段着のお着物の方が、
身体に馴染んで着心地が良かったので、
そちらを着ると住職様が涙ぐんでしまうこともあった。
「えっ?」と思って、
悪いことをしてしまったのかと思うと、
「いや。
若い頃の女房を思い出してな…」と、
頭を掻いて笑うので、
かえって申し訳ないのかなと心配すると、
「懐かしいよ。
沙羅ちゃんが嫌でないなら、
是非、着てやってくれ」と言われて、
ホッとした。
本当に茶室の畳を全て新しくして、
炉を開いてくれた。
真新しい畳の香りが嬉しくて、
思わずお行儀悪く大の字になってのんびりその香りを吸っていたら、
律さんに見られてしまった。
「えっ?
どうしたの?
沙羅ちゃん?」と言われて、
慌てて正座すると、
律さんが声を上げて笑う。
私は口を尖らせて、
「笑わなくても良いでしょ?
ほら。
横になるとね。
畳の香りが凄く気持ち良いんですよ?」と言って、
もう一度寝転んで、
大きく伸びをして息を吸った。
クスクス笑いながら律さんも同じことをしてから、
手を伸ばして私の手を握ってくれる。
そうだ!
あのこと、訊かなくちゃ!
そう思って、
律さんにそっと訊いてみた。

