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ただ一緒に居たいだけ
第9章 揺れる
慎吾さんが出て行くと、
健吾さんは、
「とにかく、眠ってください。
あ、鍵をお借りしても良いですか?
美波さんが眠っている間に、
ちょっと着替えを調達してきます。
すぐに帰るつもりだったので、
手ぶらでした」と笑った。


「あの…そこのバッグの中に、
キーケースが入ってます」と言って、
エントランスの暗証番号も伝えた。


「鍵、複製したりはしないので、
安心してくださいね」と言うので、

クスクス笑いながら、
「健吾さんも冗談、仰るんですね?」と言うと、

「いや。
冗談じゃないですよ?」と、
真面目な顔で言うので、

「それ、簡単にコピー出来ない鍵なので。
それに、信頼してますから」と笑った。


「温かい飲み物かなにか、
用意しますか?」と言うので、
首を横に振ると、

「とにかく、少しでも眠れると良いんだけど。
私はちょっと一走り、してきますね?」と笑って、
そっと短くなった髪を撫でてくれた。



健吾さんの優しい手の温もりとほのかなコロンの香りは、
とても安心出来るような気がして目を閉じると、
健吾さんはおずおずと私の額にキスをした。


私は少し驚いて目を開けると、
唇を指先でそっと撫でて、

「慎吾とキスしてましたね?」と囁くと、
本当に触れるだけの優しいキスをして、

「おやすみなさい」と言って、
慌てて部屋を出て行ってしまう。


私はドキドキした気持ちと、お腹の痛さで、
どうにかなりそうで、
取り敢えず丸まって目を閉じて眠ろうとした。
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