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ただ一緒に居たいだけ
第18章 別れと始まり

本当に哀しいことがあった時の記憶がないということを、
初めて体験した私は、
気づくと海が見える丘の家に、
慎吾さん、恵吾さんと3人で住んでいた。
早朝に3人でのんびり浜辺を歩いて、
貝殻やシーグラス、流木を拾ったり、
慎吾さんと恵吾さんがサーフィンをするのを観て過ごしたりしていた。
お料理や他の家事も3人でやっているのをぼんやり考えていると、
最初から3人家族だったような気がしては、
何かとても大切なことを忘れているような気がして、
頭が痛くなったりした。
恵吾さんの学校行事や、お稽古事も、
3人で出掛けることが多くて、
他のお母様達からは、
「仲良しですね?」と言われていた。
ダウン症ではあるけれど、
ピアノがとても上手くて、
独創的な絵を描き、
サーフィンやスキーをする恵吾さんはとても明るくて優しい男の子に育っていた。
いつも心配そうに私と一緒に寝ていた恵吾さんも、
このところは自分のお部屋で眠るようになって、
独りで寝ていると深夜に仕事を終えた慎吾さんがそっとベッドに潜り込むようになっていた。
いつも優しく額にキスをしてくれて、
腕枕をしてくれると、
私は胸にすっぽり収まるように丸くなって朝まで安眠することが出来た。
朝、起きると、
「美波さん、おはよう」と言って、
また、頬と額にキスをしてくれて、
ギュッと抱き締めてくれてから起きて、
コーヒーを淹れにキッチンに行ってしまう。
ぼんやりしていると、
時々涙が出てしまうけど、
なんの涙なのかよく判らなかった。
「ママ、コーヒー入ったって?」と、
恵吾さんが部屋を覗いて、
私が泣いているとびっくりして駆け寄って、
私にしがみついて、
「パパ〜。
ママが泣いてるよ」と言う。
「恵吾さん、ごめんね。
なんで、ママ、泣いてるのかしら?」と言いながら、
恵吾さんの髪を撫でてると、
気持ちが落ち着いてくる。
「お腹、空いてきちゃったからかな?」と言うと、
安心した顔で笑って、
私の手を引いてくれる。
「僕がトースト、焼くね?」と言って、
トースターに食パンをセットして、
真剣な顔で覗き込むのを見る恵吾さんを観ていると、
幸せな気持ちになる。
でも、何かが欠けているような気がしてしまっていた。
初めて体験した私は、
気づくと海が見える丘の家に、
慎吾さん、恵吾さんと3人で住んでいた。
早朝に3人でのんびり浜辺を歩いて、
貝殻やシーグラス、流木を拾ったり、
慎吾さんと恵吾さんがサーフィンをするのを観て過ごしたりしていた。
お料理や他の家事も3人でやっているのをぼんやり考えていると、
最初から3人家族だったような気がしては、
何かとても大切なことを忘れているような気がして、
頭が痛くなったりした。
恵吾さんの学校行事や、お稽古事も、
3人で出掛けることが多くて、
他のお母様達からは、
「仲良しですね?」と言われていた。
ダウン症ではあるけれど、
ピアノがとても上手くて、
独創的な絵を描き、
サーフィンやスキーをする恵吾さんはとても明るくて優しい男の子に育っていた。
いつも心配そうに私と一緒に寝ていた恵吾さんも、
このところは自分のお部屋で眠るようになって、
独りで寝ていると深夜に仕事を終えた慎吾さんがそっとベッドに潜り込むようになっていた。
いつも優しく額にキスをしてくれて、
腕枕をしてくれると、
私は胸にすっぽり収まるように丸くなって朝まで安眠することが出来た。
朝、起きると、
「美波さん、おはよう」と言って、
また、頬と額にキスをしてくれて、
ギュッと抱き締めてくれてから起きて、
コーヒーを淹れにキッチンに行ってしまう。
ぼんやりしていると、
時々涙が出てしまうけど、
なんの涙なのかよく判らなかった。
「ママ、コーヒー入ったって?」と、
恵吾さんが部屋を覗いて、
私が泣いているとびっくりして駆け寄って、
私にしがみついて、
「パパ〜。
ママが泣いてるよ」と言う。
「恵吾さん、ごめんね。
なんで、ママ、泣いてるのかしら?」と言いながら、
恵吾さんの髪を撫でてると、
気持ちが落ち着いてくる。
「お腹、空いてきちゃったからかな?」と言うと、
安心した顔で笑って、
私の手を引いてくれる。
「僕がトースト、焼くね?」と言って、
トースターに食パンをセットして、
真剣な顔で覗き込むのを見る恵吾さんを観ていると、
幸せな気持ちになる。
でも、何かが欠けているような気がしてしまっていた。

