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かくれんぼ
第3章 回想 里織
 「タヌキさん。こちら転校生の赤沢里織さん。」
 里織ちゃんが紹介されてペコリと頭を下げる。
「三学期から転校してきた赤沢里織です。」
 なる程。
 転校生ならクラスメートの名前がうろ覚えでも仕方がない。
 むしろ僅か10日弱でうろ覚えでも記憶してるだけ誉めてやるべきだろう。
 腹の中で評価を書き換えてると里織ちゃんはクスクス笑いだす。
 「本当に用務員さんってタヌキさんっていうんですね。」
 「嗚呼、それね。正しくは四月朔日参次。みんな何処かにわとじを置き忘れるんだよ。」
 とお約束の自己紹介をしながら丸く突き出たお腹をポンと叩いてみせる。タヌキの腹鼓だ。
 里織ちゃんは笑いのツボが浅いのかたったこれだけの事でケタケタと笑い転げる。 
 一頻り笑い目の端に溜まった涙を指で払う
 「蒼真さんはここで何してるの?」
 話題の切り替えが早い。
 そして雑だ。
 「勉強みてもらってるの。」
 どちらかと言うと人見知り引っ込み思案な涼音ちゃんの苦手なタイプだ。
 返す言葉も短く素っ気ない。
 「へぇ~。いいな。タヌキさん、私も一緒に勉強しちゃ駄目?」
 ダメ!っと腹の中で即答する。
 涼音ちゃんとの楽しい時間を邪魔されてたまるか。
 何か理由を付けて断ろう。
 「前の学校と比べたら教科書も違うし内容も進んでるしでもうちんぷんかんぷんのお手上げ万歳降参状態なの。お願い。助けて下さい。」
 どことなく昭和の臭いがする物言いに思わず苦笑するが決意は変わらない。
 「わる」
 「タヌキさん。」
 悪いんだけど、と切り出しかけた俺の上着の袖を引っ張って涼音ちゃんが止める。
 「涼音、一緒に勉強してもいいよ。」
 驚いた。
 正直脳天をハンマーで殴られた位の衝撃だった。
 「いいの?」
 「うん。勉強判らないと学校つまらないから。」
 なる程。
 ほんの数ヶ月前までは涼音ちゃんも勉強が苦手でクラスから浮いて軽い虐めにあってたんだった。
 似た境遇の里織ちゃんを見捨てる選択肢はないのだ。
 「OK。時間は平日の放課後30分程だから。気が向いたらおいで。」

 翌日から毎日里織ちゃんは用務員室に顔を出すようになった。
 涼音ちゃんの時と違って勉強が判らないのではなくいま授業でやってるところまで習ってないだけなので少し手助けするだけで追い付くのは早かった。
 
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