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かくれんぼ
第2章 回想 涼音
ウサギは特に驚いていなかったが涼音ちゃんは目を丸くしていた。
「あ、あの。」
「手伝うよ。」
返事を待たずに掃除を始める。
一応俺は掃除のプロだ。子供三人分の働きは出来る。
小屋内の清掃、糞尿の始末、餌と水の補給。
全てを終えて小屋に施錠するまで10分とかからなかった。
「ご苦労様。」
服の汚れを叩いて赤いランドセルを背負う涼音ちゃんに声を掛ける。
「ありがとうございました。」
ペコリ。
頭を下げた途端ランドセルの中身が雪崩の様に零れ落ちる。
まるで漫画のようだが本人は笑う余裕はない。
慌てて地面に散らばった教科書ノートをかき集める。
うん?
何だこれ?
少し遠くに落ちていた紙を拾う。
「あ!それダメ!」
涼音ちゃんの制止の声は遅かった。
算数のテスト。
14点。
「蒼真さんは算数苦手?」
判りきった質問に真っ赤になりながらも小さく頷く。
「そうか。俺でよかったら教えてあげようか?」
「本当に!」
一瞬顔が明るく輝くがすぐに沈んでしまう。
「涼音バカだから無駄になるよ。」
余程成績の事で周りから貶されてきたのだろう。すっかり自信をなくしている。
「任せなさい。こう見えても俺、校長先生より学歴上だからさ。」
用務員が学校で一番偉い人より頭が良い。
そんな荒唐無稽な言葉に涼音ちゃんは指先をペロリと舐めて眉に塗る。
ほぉ。
「よくそんなお呪い知ってたね。全然バカなんかじゃないじゃない。」
ポムポムと頭を撫でてやると擽ったそうに肩を竦める。
「タヌキに化かされたと思って明日から30分だけ一緒に勉強してみよう。」
考える余裕を与えると遠慮しそうなので少し強引に予定を決めてしまう。
翌日からウサギ小屋の掃除の後用務員室での個人授業が始まった。
1日30分。国語、理科、算数、社会科の日替わり授業。
学校の学習指導要領を考慮したり他の児童との足並みを揃える必要がないので年単位で遡り躓いた所から丁寧に復習していく。
例えば涼音ちゃんの算数は分数と小数で立ち止まっていたのでそこを重点的に噛み砕いてやっていく。
涼音ちゃんはけして馬鹿ではない。
順を追って理解するまで根気よく基本さえ教えれば後は自分でどんどん応用していける。
要は時間に追われて見切り発車する教師に問題があるのだ。
「あ、あの。」
「手伝うよ。」
返事を待たずに掃除を始める。
一応俺は掃除のプロだ。子供三人分の働きは出来る。
小屋内の清掃、糞尿の始末、餌と水の補給。
全てを終えて小屋に施錠するまで10分とかからなかった。
「ご苦労様。」
服の汚れを叩いて赤いランドセルを背負う涼音ちゃんに声を掛ける。
「ありがとうございました。」
ペコリ。
頭を下げた途端ランドセルの中身が雪崩の様に零れ落ちる。
まるで漫画のようだが本人は笑う余裕はない。
慌てて地面に散らばった教科書ノートをかき集める。
うん?
何だこれ?
少し遠くに落ちていた紙を拾う。
「あ!それダメ!」
涼音ちゃんの制止の声は遅かった。
算数のテスト。
14点。
「蒼真さんは算数苦手?」
判りきった質問に真っ赤になりながらも小さく頷く。
「そうか。俺でよかったら教えてあげようか?」
「本当に!」
一瞬顔が明るく輝くがすぐに沈んでしまう。
「涼音バカだから無駄になるよ。」
余程成績の事で周りから貶されてきたのだろう。すっかり自信をなくしている。
「任せなさい。こう見えても俺、校長先生より学歴上だからさ。」
用務員が学校で一番偉い人より頭が良い。
そんな荒唐無稽な言葉に涼音ちゃんは指先をペロリと舐めて眉に塗る。
ほぉ。
「よくそんなお呪い知ってたね。全然バカなんかじゃないじゃない。」
ポムポムと頭を撫でてやると擽ったそうに肩を竦める。
「タヌキに化かされたと思って明日から30分だけ一緒に勉強してみよう。」
考える余裕を与えると遠慮しそうなので少し強引に予定を決めてしまう。
翌日からウサギ小屋の掃除の後用務員室での個人授業が始まった。
1日30分。国語、理科、算数、社会科の日替わり授業。
学校の学習指導要領を考慮したり他の児童との足並みを揃える必要がないので年単位で遡り躓いた所から丁寧に復習していく。
例えば涼音ちゃんの算数は分数と小数で立ち止まっていたのでそこを重点的に噛み砕いてやっていく。
涼音ちゃんはけして馬鹿ではない。
順を追って理解するまで根気よく基本さえ教えれば後は自分でどんどん応用していける。
要は時間に追われて見切り発車する教師に問題があるのだ。