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 縄師-Ⅱ 中・高編
第5章  リョウと千鶴
「私、どうなるんだろう」

 千鶴がぽつりと言って、湯を跳ねさせてキスをした。 

「母さんが言ってたけど、私を知る女の人は、私のことを『清純なのに不思議なオーラがある』っていってるみたい。でもオーラって色気ってこと言ってるの、私知ってるんだ」

 その意味は俺にもわかった。

「私、どんどん感じるようになってる。リョウに、股縄して朝まで虐めてやるっていわれただけでもあそこがキュッてなるんだよね。虐めてほしい。うんと苦しめてって思って顔が熱くなる。でも若し未来に誰かと結婚するとして、その相手がそんなこと言うわけがない。結婚する相手って、子供を産んで育てる普通を望んでるからね。だからって子供産むだけのセックスに私、我慢出来そうにないし」
 
 千鶴の悩みは俺の悩みでもあった。

 俺だってやがては何かの仕事をして、女性と結婚して子供を育てて……
 それからどうするんだ……。結婚した相手を虐めたり苦しめたりできる訳がない。

 普通って、生きるってなんだ。

「ちづはさ、美人で賢いから、お金持ちでカッコいい人と結婚して楽に生きてけれる可能性があるわけじゃん。だったらその楽で優雅な生活のためにエッチをどれだけ我慢できるか比較するみたいな話しじゃないかな」

「リョウに言っとくけど私はね、好きな人とでなきゃセックスできないの。リョウとだったら今からでもできるけど、他の人とは気持ちが悪くてできないの。だからいくらお金持ちでもセックス無しって言うのは私には無理」

「だったら俺と結婚すれば良いじゃん。俺達がしてるこういうセックスはいつかは終わると思う。子供はそれから作っても作らなくてもいい」

「いいの? 今からそんなこと言って。もっと素敵な彼女ができるかも知れないのに」

「それは心配してない。ちづより素敵な女性は芳恵さんぐらいだし。それより俺、どうすればってか、何がちづを幸せにするのかがわからないんだ。でも、これが幸せってわかれば、全力でちづを幸せにする」

「ホントだ。結婚の時って必ず言うのよね。幸せにしますとか、なりますとかって。あの幸せってどんな事だろうね。いいじゃん。今はわからなくても。一緒に捜そうよ」

そう言う千鶴は笑顔の可愛い、とびっきりチャーミング……なだけの普通の女の子に見えた。
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