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 縄師-Ⅱ 中・高編
第1章  縄師-Ⅱ ごっこの終わりから

 次の日、下校の時だ。校舎を出たところで誰かが俺に向かって走ってくるのに気がついた。
 見た顔ではない。多分2年の男子だ。

 いきなりジャンプして俺の頭を蹴ってきた。

 曲げた膝から伸びる足刀ではなく、下手な走り幅飛びのように最初から膝を伸ばした蹴り方だ。
 だから簡単に足首を掴めた。
 掴んだ足を上に持ち上げると、そいつは頭から地面に落ちたので、鳩尾(みぞおち)に膝を叩き込んでやった。

 たったそれだけでその男子は苦しそうに呻きながら身体を丸めた。
もう一つ、耳を蹴って鼓膜を破ろうか、鼻を蹴って骨を折ろうかと、靴の先が入る隙間を探していたら、「やめろ」という声がした。

 俺はうずくまっている奴の顔を踏みつけ、逃げられないようにしてから声をかけた奴に「俺はお前からやめろと命令される位置にいない。誰だお前」と訊ねた。

 2年だということは分かっていた。だが名乗らない以上ただの『仕掛けてきた奴の連れ』で、喧嘩相手でしかない。

 そいつは俺の質問には答えず、
「宮下はもう喧嘩する気が無くなっているのに、倒れた奴を蹴るのは卑怯だろう」と、如何にも年上臭いセリフを吐いた。

「バカだろお前。こいつが走ってくるのに気がつかなけりゃ、いきなり頭を蹴飛ばされてたのは俺の方じゃん。やめてくださいってお願いするのはこの宮下って奴。ごめんなさいって謝るのもこの宮下って言う奴だろが。立場と口のきき方に気をつけろ」

 既に周りに10人ぐらいの生徒が集まって見ていた。
 俺はみんなに聞こえるように声を荒げる。

「テメェがこいつのダチだったら、やることはこの宮下って奴のヒキョーな行為を俺に詫びることだろうが、それをしねえで俺に指図するなら、テメエはこいつと一緒の立場って事だ」

 俺は宮下の顔から足を外し、偉そうに立ってるそいつの間合いに入った。
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