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 縄師-Ⅱ 中・高編
第1章  縄師-Ⅱ ごっこの終わりから
 それほどド派手なスタートだったにもかかわらず、学校で孤立することもなく、ダチも多くできたのは千鶴のせいだ。

 千鶴は転校してきたとき『可愛くて聡明。誰にでも優しい』そんなイメージで登場したらしい。
 だが優しいは少し違う。

「余計なことは言わなくて、微笑んであげる。するとね、人は自分の都合の良いように解釈するものなの。 だから私のイメージはそれぞれが自分の理想で作ってるのよ」

 そんな高度な技は知らないけど、俺を千鶴に近付くための媒体にするために声をかけてくる奴らは確かに居た。
 

 俺は苦手な数学や英語の授業の後、解らないところをよく千鶴に聞きに行った。

 俺達が談笑する姿は生徒達の羨望の的になったらしい。

「もう。リョウが来るもんだから彼氏候補が1人も来なくなった。知ってる?美女と野獣って言われてるんだよ」

「へッ良く言うよ。彼なんか作る気もないくせに」

 確かに俺が千鶴の教室に入った途端、千鶴を取り巻いていた男女が離れていった。
 そして輪になって俺と千鶴の一挙手一投足を見つめるのだ。

 男子は千鶴が俺に向ける軽やかな笑顔にあこがれ、女子は俺の凶暴性のある危険な香りに後ずさりする。

 千鶴はそんな取り巻きをまったく意に介さず、俺のノートに書き込みをして説明した後、
「結局さ、リホと宮下がくっついたけど、それってリョウのおかげだよね」

「惜しかったね」とでも言うようにコロコロと笑う。

「よかったじゃん。ちづも俺に彼女が出来なくて嬉しいんだろ」

「授業始まるよ。帰れ」

 図星だったのか、俺の顔をめがけて振り上げた足がスカートを捲り、遠巻きで見ていた奴らが口をあけて息を呑んだ。

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