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縄師-Ⅱ 中・高編
第2章 蔵
芳恵の首と手首に縄の痕がみえないのは、濃いファンデーションとコンシーラーが塗られているからだ。
服で見えない身体の殆どの場所に鞭のミミズ腫れがついているだろうに、元気で溌剌としているのが不思議な気がした。
二人が大阪に行くのを見送ったあと、預かった鍵で蔵に入った。
昨夜芳恵を責めていた各種の道具を、階段タンスにしまうのを見ていたので確認をしたかったのだ。
別名を、蜂の巣箪笥という。箱を並べて積み重ねたような形状の引き出しを、俺は最下段から上に開けていった。
何かが入っている引き出しは開けたままにして、空の引き出しは戻しておく。
開けておいた引き出しを、今度は上から中身を確認しながら閉めていく。
上段の引き出しにはカギの束。拵え(こしらえ)つきだが登録証のない短刀。どの時代の幾らの価値があるのかも分からない古銭。時代劇で見るような、捕縄の束や十手。
他には捕り物の早縄掛けの本と、責め絵と拷問図だ。
この絵を見ると、人間の身体はどう曲げることで力が失われ、苦痛が生じ、その状態にするためにどう縄をかければいいのかということが理解できる。
拷問図を見て、蔵の隅に置かれた三角の台が何かも理解できた。
これらの道具は、時代が変わる間際に牢役人か誰かが奉行所から持ち出し、質に入れたとのだと推測出来る。
再び世に出ることはないと確信して質蔵の奥に仕舞い込まれた道具類だったのだろうが、田村おじと何代かの当主はこの絵と道具を引き継いで自分の世界を構築したのだ。
田村おじの道具は殆どが中段に集中して収納されていた。
電動マッサージ機。バイブ。ローターの振動系に加えて、電マに取り付けられる様々のアタッチメント。
ネットの通販カタログでは女性の使用感レポートと共に定番化している道具達だが、 実物を見るのは初めてだ。
他には鞭が数種類、革の拘束具、ローションにコンドーム、細い針が入った硝子の容器などが詰め込まれていて、2人はいったいどれくらい前からこういう関係だったのだろうと驚いた。
俺は引き出しに収納してある品物と場所を記憶して、蔵を閉め、千鶴を起こしに行った。