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寝取られ妻
第4章 再び
久美子は矢野に会うべく、彼のアパートに向かっていた。

住所は教えてもらっている。

こんな時にスマホのナビは役に立つのだった。

アパートの前に立った久美子は少し驚いていた。

『板垣荘』

木製の看板の文字も消えかかり、今にも腐り落ちそうな
年代物だった。

筑後30年、いや40年か50年かも知れなかった。

(あんなにイケメンで外見に拘りを持っている男性が、まさかこんなボロアパートに住んでいるとは・・?)

信じられなかった。

でも、『板垣莊201号室』は間違いなくこのアパートの2階だった。

少し驚きながら久美子はギシギシ音のする階段を登ったのだった。

「ピンポーン♪」

古いタイプの呼び鈴を押した。

「はい!」

中から矢野の声がし、しばらくしてドアが開いた。

矢野に通され、久美子は靴を脱いで上がり込んだ。

手前が台所とトイレのある8畳の和室で奥が6畳の和室だった。

壁は張り替えたのか古さは感じなかった。

だが、窓には数ミリの隙間があり、天井には雨漏りの跡と思われるシミもあった。

「その辺に座れよ」
 
矢野がミネラルウォーターのペットボトルを久美子に手渡しながら勧めるのだった。

「ありがとう」
 
久美子は正座していた。

「何だよ・・神妙な顔してよ!」

矢野がからかうように言った。

「この前の事・・なかった事にして・・」

久美子はやっとの事で口を開いた。

矢野の顔が見れなかった。

「アハハ、久美子の事だから、何か言ってくるかと思っていたよ」

そう言って矢野は笑うのだ。

「私・・結婚してるから・・」

「ああ、わかってるよ!だから・・?」

「だから、この前の事は・・」

「あれが夢だったら良かったのに・・か?でも、現実は現実だぜ!実際にあった事をなかった事になんて出来っこないだろ?」

矢野は笑っていた。

「そうだよね・・。でも、そうしてもらわないと・・私・・これから祐介の顔をまともに見れなくなっちゃうから・・」

久美子は俯いたまま、静かな口調で語るのだった。

「久美子、俺の気持ちは知ってるだろ?祐介と別れて俺のところに来いよ!」

矢野が身を乗り出して来た。

「ダメよ!そんな事出来ない!」  

久美子は顔を振った。

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