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第5章 オフィスメイド　関口　美穂

　土井は、にこやかに微笑みながら返答した。　「私をはじめ、周囲の皆さんにも、そうやって気を遣われて、本当に、久松さんの誠実なお人柄が良く分かります。大丈夫ですから、ご自分のお気持ちを大事になさって下さい。私も、他のご当主の皆さんも、久松さんが前向きに歩き出すのは、嬉しいですよ。」　そして、久松の顔に安堵の表情が浮かぶのを見ながら、話を続けた。

　「これまで、うちの女性社員たちは、２０歳代から４０歳代位まで、いろいろな形で退職してきました。さすがに、ご当主がお相手というのはありませんでしたが、良縁を得た社員もいるんですよ。いずれにしても、彼女たちは、オフィスメイドとして大変な秘密を抱えたままですので、退職後もきちんと生活が成り立つように、私や、ご当主の皆さんが、一人一人を大事に見守っています。その意味では、うちの社員との結婚自体がどう思われるかではなくて、久松さんが、この先、ずっと彼女を大事にしてくれるかどうかを、周りはいつもきちんと見ている、ということを意識されるべきでしょう。」