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第3章 オフィスメイド　森本　沙織

　翌日、沙織は、昼過ぎまで、ダブリン市内の閑静な住宅街にある＜聖ジョセフ教会＞で、ゆっくり過ごした。沙織が、出発前に、愛育院のアイルランド出身のシスターに電話した時に勧められたこの教会には、聖母マリアの”受胎告知”と”聖母戴冠”の、２つの美しいステンドグラスがある。 ２０世紀初めに、アールヌーボーの画家、ハリー・クラークが製作したもので、中世のものとは雰囲気の異なる、かわいらしいお顔立ちのマリア様を長い時間見つめていると、心が落ち着いた。

　ホテルに戻って、買ったばかりのキルトスカートと、プレゼントされたアランセーターを身に着けると、マックウェル家の執事の運転で、郊外の立派な屋敷に案内された。母親と、同年輩の女性の二人が、にこやかに出迎えてくれた。母親が、　「ここは、私の友人のお宅なの。あなたのことを話すと、＜是非、一緒にお会いしたい＞と仰ってね。」　と言って、紹介してくれた。