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夢見る夢子
第8章 失われた能力
それからというもの
幽体離脱が出来なくなり
月日という時間だけが無情にも流れた。
だけど、お陰で
学生として勉学にいそしむことが出来た。
夢子には大学受験という
大きな壁が待ち受けていたからだ。
親友の真紀子は
大学に進学せずに
高校を卒業したら結婚すると言い出した。
「真紀子、あんたさあ、
本当に大学へ進学しないの?」
「うん、もともと勉強するのは苦手だったし
彼も高校を卒業したら
結婚しようと言ってくれてるし…」
真紀子の言う「彼」というのが
社会科の谷本先生だと言うのだ。
「それに…私さあ…
どうやら妊娠しちゃったみたいなの」
真紀子はサラリと言ってのけると
大事そうにお腹をさすった。
「えっ?!マジ?」
真紀子に憑依して谷本先生と
肉体関係になるきっかけを作っただけに
喜びもひとしおだった。
夢子の周りで幸せを手にする人が増えて
夢子自身も幸せだった。
幽体離脱の特技でキューピッドになろうと
誓ったあの日から
続々とカップルが成立して嬉しいのだけれど
さて、自分はどうだろうと振り返ってみると
ポツンと独り取り残されて
いまだに彼氏さえ出来ない日々が続いている。
まあ、そのうち、素敵な男性が現れるだろうと
そう思いながら月日の時間だけが流れた。