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夢見る夢子
第8章 失われた能力

「さあ、こちらです
どうぞご案内します」

授乳室を利用するお客さんが多いのか
バイトの彼はスタスタと先を急ぐ。

「あ、待って…
私、ミルクの用意をしてこなかったわ」

授乳室の前まで案内してもらったものの
肝心のミルクを持参していないことに気づいた。

「ご安心ください
当店は品揃えバッチリのスーパーです
赤ちゃんのモノからお年寄りのモノまで
なんでも揃ってますよ」

待っててください、
すぐに買ってきますから

バイトの彼は、そう言い残すと
サッと身をひるがえして売場に消えていった。

『カッコいい…
あんな人が彼氏なら鼻が高いわ』

でも、きっと彼女がいるわよね
だって、あんなにカッコいいんだもん。

弟をあやしながら暫く待っていると
粉ミルクと哺乳瓶を抱えてバイトの彼が帰ってきた

「ミルクのメーカーはどこでも良かったのかな?」

「ええ、何でもいいわ、
この子、どこのブランドでも
グビグビ飲んじゃうから」

「そう、それなら良かった
じゃあ、ごゆっくりどうぞ」

ドアを指差してバイトの彼は
部屋に入ろうとしない。

「一緒に手伝ってくれないの?」

「残念ですが、僕は男なので
この部屋には入れないんですよ」

ほら、なかには母乳を飲ませるお母さんもいるし…

そう言われて、あ、それもそうねと納得した。


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