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夢見る夢子
第8章 失われた能力

土曜日の午後…

約束通りに亜土夢はやって来た。

「まあまあ、いらっしゃいませ
こんな感じなので何のお構いも出来ませんけど
ゆっくりしていって下さいな」

母の芙美子は上機嫌で亜土夢を迎え入れた。
夢子の弟である圭を抱いているので
お相手もままならないと詫びた。

「いえ、こちらこそ
お言葉に甘えてお邪魔しました。
どうぞ、お構いなく」

そう言って亜土夢はスーパーの袋を差し出した。

「僕、スーパーでバイトしているんで…」

こんなもので良ければと
シュークリームを芙美子に手渡した。

「ママ、後は勝手にやるから
圭くんをお願いね」

「ええ、わかってますとも…
夢子がずっとあやすから、
この子ったら抱き癖がついちゃって…」

子供の世話をしなければいけないから
部屋には行かないから
二人で楽しい時間を過ごしてちょうだいね

そう言うと母の芙美子は夢子に向かって
小声で「上手くやんなさいよ」と言って
ウィンクをした。

しかし、いざ夢子の部屋で二人っきりになると
妙な緊張感が生まれた。

「やっと二人っきりになれたね」

どちらからともなくベッドに腰かけて
二人は見つめあった。


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