この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夢見る夢子
第1章 プロローグ
「安心なさい、半分生体のあなたを
連れていこうだなんて思っていませんから」
のっぺらぼうの男は夢子の心の声が聞こえるのか
そのように言うと「くくくくっ」と
口もないのに卑屈に笑った。
コホン…
脱線したのを誤魔化すかのように
一つ咳払いをすると
男は微動だにせずに自分の遺影を見つめる女に
「この後、どうしますか?」と尋ねた。
「あなたの心は49日法要が済むまで
ココに留まる事が出来ます」
「それならば、そうさせてください
少しでも主人の傍を離れたくないんです!」
「それはかまいませんが
下手に生体のご主人に繋がりすぎると
彼も命を終えることになりますよ」
ご主人の事を思うのなら
早めに旅立つことをおすすめしますがね
その方が彼も立ち直るのが早いんですけどね
この男は情け容赦のない奴だなと
夢子はのっぺらぼうに向かってキッと睨んでやった
「無慈悲と思いますか?
だって彼女はすでに生体ではないから
ご主人に思いを寄せても
声も届かないし姿も見せれないんですよ?
早く立ち直ってもらう方が
いいと思いますけどねえ」
そう言われると言い返せなかった。
「それよりもあなたが心配です」
男は身をかがめて夢子の意識を抱き締めた。