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夢見る夢子
第6章 ナース 彩佳
北見先生の手のひらに
柔らかい感触が伝わった。
しかし、北見先生は驚いて
手をスッと引き戻した。
「私、先生にお礼がしたいんです」
もう一度、北見先生の手を取ろうとしたが
「お礼とか気にしないでいい。
俺が勝手にやったことだから」
こういう気取らないところが、
女性看護士たちは北見先生に惚れてしまう。
「それに、好きな子があんなことをされてて、
黙って見てらんなかっただけだよ」
一瞬、言われたことの意味が理解できなかった。
空耳だと思った。
聞き間違いだと。
だって、好きな子、だなんて、そんな…。
「信じられないって顔してるね」
その時の自分がどんな顔をしていたかは
彩佳は分からなかったけれど、
きっと間の抜けた表情をしていたのだと思う。
そんな私を見て、北見先生はおかしそうに笑った。
「え、だって…」
「もう一回言わなきゃ分からない?」
唐突に顔を寄せられた。
耳元で「それとも」と囁かれる。
「もっと分かりやすい方がいいかな?
こんな時間に彩佳と当直室で二人っきりになって、
もうこの部屋から出したくないって思ってるって」
言い終わると同時に、
彩佳は北見先生に抱き締められていた。