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夢見る夢子
第6章 ナース 彩佳
北見先生は、ゆっくりと彩佳の肩を押した。
横になってくれよという合図だ。
当直室の部屋の照明が消された。
彩佳をベッドに寝かせてから、
北見先生も覆いかぶさるようにベッドに上がる。
彩佳を安心させるように頭を撫でる手。
やがてその手は耳をくすぐり、
両手で頬を包まれた。
顔中にいくつものキスが落とされた。
「彩佳…」
「はい?」
「俺のことも下の名前で呼んで」
そんなこと出来ない。
ただでさえ勤務歴も年齢も下の私が、
ドクターを名前で呼ぶなんて。
「呼んでくれないとエッチはお預けだよ」
その言葉に、改めて今の状況を自覚した。
当直室のベッドで、
これから二人は初めて体を重ねようとしている。
でも、それを望んだのは彩佳だ。
抱きしめられた時、「帰ってもいいんだぞ」と
腕の力を抜いてくれたのに
彩佳は部屋を飛び出す事を拒んだ。
いつもの彩佳ならキスされ、
ハグしてもらっただけで充分で
「では、失礼します」と
部屋を飛び出したはずなのに…
『今夜の私はいつもの私じゃないわ…』
そう思いながらも
『いえ、これが本当の私なのかも』と思った。
「修也…さん」
思いきって北見先生の下の名を呼んでみた。
「『さん』はいらないかな」
「さすがに呼び捨ては無理です」
そう答えると、
先生は「しょうがないなあ」と言って笑った。
「ただし、彩佳の可愛い声、いっぱい聞かせてね」
今度は「無理です」とも言えず、
ただ頷くしかなかった。
北見先生は彩佳の私服を
一枚一枚ゆっくりと脱がしてゆく、
もう後戻りは出来ないのだという思いが強くなる。
いつ人が来るとも分からない。
病棟からの呼び出しがあるとも限らない。
でも、だからこそ今、北見先生が欲しいと思った。