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自慢の母親
第1章 自慢の母親
「コン、コン・・」

ゆかりが手作りのケーキを運んできた。

「うわあ、美味しそう」

「俺、おばさんの作るケーキ大好きなんですよ」
 
前にも我が家を訪れている田中と斎藤が大げさに喜んでいた。
 
「あら、そんなに喜んでくれるなんて嬉しいわ」

ゆかりは大事な一人息子の友達は大切にしたかった。

だから、複数の人間が集まるこの場も大切にしたかったのだ。

「お母さんは今でも若いし、美人なんだから、昔は随分モテたでしょうね?」

戸田が口を挟んできた。

皆がゆかりに注目している。

「そんな事ないわよ。私なんて全然・・」

ゆかりは手を振って否定するのだった。

「今はお仕事されてるんですか?」

またしても戸田が質問した。

「あ。うん・・昔働いていた所でパートでね」

「もしかして、8時15分の電車に乗りませんか?」

「え・・?乗る・・わよ」

ゆかりは驚いて戸田を見たのだった。

「僕も乗るんですよ、その電車に・・」

「えー?本当に?奇遇ねえ。顔を覚えたから、今度は駅で会ったら挨拶するわね」

戸田とゆかりが楽しげに会話を交わしていたものだから、他の3人は割り込む隙がなかった。

「わあ、嬉しい!いつも一人だから、今度は会えるわね」

ゆかりは痴漢の事もあって、戸田の存在を心から嬉しく思うのだった。

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