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I‘m yours forever
第4章 美月は何も知らなかった 前編
「そんなに三原の香水が気になるのか?」
口の端を釣り上げながら、彼はその意地悪な笑みを濃くした。
「え、な、何で?!わ、私、まだ一言も....。」
嫉妬したんだろう?と彼に言い当てられた私は一気に顔に熱が集中するのを感じながら、彼に尋ねる。
「顔を背け、曇らせる。後は握り拳を作る。お前が嫉妬している時の癖が全て出ていた。」
「癖...?わ、私にあったんですか?」
「婚姻前も1度やっていたが...無自覚だったのか?可愛い奴だな。」
彼はそう言うと私の額にキスを落とした。
「か、可愛くはないです。ただ面倒なだけで...。」
「面倒?ずば抜けて可愛いだけだろう。」
「そ、そんな事は全然…。」
「安心しろ。お前の清香に勝る香りなどこの世に存在しない。」
そう断言した彼の唇は、今度は私の頬に移動した。2度目の口付けだった。
嫉妬心が満たされていくと共に、褒めちぎられて面映い気持ちになった私は、何とか気分を落ち着かせようと、その嫉妬する時に無意識に出ていたという癖を記憶から辿り始めた。
「俺は他の女を想像しながら、お前を抱く気は更々ないが。それでも不満か?」
何処か聞き覚えのある言葉だ。
そう思った瞬間、日比谷教頭の家に初めて招き入れられた記憶が脳裏に蘇る。
私の顔は完熟したトマトのように赤くなった。
同じ台詞だった。意中の女を口説くような台詞だと思った、あの時と全く同じだ。
嫉妬した際に無意識に出るサインは、1つだけ思い出した。
「何だ拗ねたのか?」と彼に問いかけられる前に確かに顔を顰めたような気がするのだ。
愉悦に浸った彼の顔には
お前を揶揄うのが楽しくて仕方がない。
そう書かれているかのようだった。