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ふぞろいのザクロたち
第6章 真佐子の母
家の中は綺麗に整理整頓されていた。
以前に家庭内暴力の生徒の家庭訪問した時は
それはそれは悲惨な状態だったが
あれに比べれば雲泥の差だ。
「ちょっとお邪魔してもいいですか?」
「それはかまいませんが
あの子は部屋から出てこないと思います」
佐智子の口調は
もう、どうしたらいいのか
わからないという感じだ。
「とにかく、何か原因があるはずだから
時間をかけて真佐子さんを口説いてみましょう」
洋介が家に上がり込んで
真佐子の部屋をノックして
いろいろと話しかけたが
部屋の中から帰ってくる返事は
帰ってくれの一点張りだった。
洋介には気になることが
もうひとつあった。
それは母親の佐智子の精神的な疲弊だ。
このままでは佐智子が潰れてしまう。
そう思った洋介は
「どうです?気分転換に散歩してみませんか?」
そう言って佐智子を屋外に誘い出した。
「ほんとにご迷惑をおかけして
申し訳ないと思っています」
外気に触れて
いくぶん気持ちが落ち着いたのか
佐智子から、なんとも言えぬ色気が滲み出てきた。
「お母さんが気に病むことはありませんよ
あなたは朗らかにしていればいいんです
母親は家庭の太陽ですからね」
「ありがとうございます」
洋介を見つめて微笑む顔に
悪いとは思いながらも
生徒の母親というよりは
一人の女として洋介は意識してしまった。