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ふぞろいのザクロたち
第9章 告白
「お母さん…
どうしてここに?」
「どうして?
よく言うわよ」
信子はスマホの通話メッセージを再生した。
『あ、母さん?俺だよ広だ。
今日はスッゴく良いことがあったからさあ
食事でも一緒にどう?
いつもの例の店にいるから良かったらおいでよ』
「あんたねえ、親を誘っておいて
それさえも忘れる?」
そうだった!
すべてが片付いて心が弾んでいたので
信子を誘ったことさえ忘れていた。
「この子ね、昔っからそうなの
二つの事を同時に出来ないの
なにかをすると片方がおろそかになって…
こんな息子ですけど、
末長くお付き合いしてあげてね」
信子が頭を下げたので
つられて恵美里も頭を下げたけど
肝心の広からは付き合ってくれだのと
一言も言われていないのだけれど…
「私、どうやらお邪魔のようですし…
どうぞ、親子水入らずで食事を楽しんでください」
何故だかわからないけれど
恵美里は無性にいたたまれなくなって
気づけば席を立ってお店を後にしていた。
「変な奴」
広は店を出てゆく恵美里の後ろ姿を
ボンヤリと眺めていた。
「変な奴はあんたの方よ!
早く恵美里を追いかけなさい!!」
「えっ?ここへ連れ戻して来いっていうのかい?」
どこまで鈍いのかと
我が子ながら信子はイライラしてきた。
「恵美里を連れて
二人っきりになれるとこに行きなさいっての!」
席を立ち上がった広の尻を
信子は力いっぱいぶっ叩いた。