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濡花 ~義理の父親に堕とされていく若妻~
第30章 密会 ~本章~
花怜は玄関の鍵を閉めると通路を見渡した。
誰もいない。
夫はリビングで言葉を交わし別れた。

【大丈夫…誰にも見られていない……】

エレベーターとは反対に歩き出す。
ほんの数秒で目的のドアを開いた。

身支度を整え黒木にLINEをしていた。

『もうすぐ出ます。』

黒木は待っていたかのように既読を付けると、すぐに返信してきた。

『鍵は昨日からずっと開いている。』

本当に開いていた。
ドアの閉まる音に黒木がリビングから出てくる。
歩み寄りながら話しかけてきた。

「待ってたよ…奥さん……」

「…黒木さん…お邪魔します……」

玄関に立ち尽くした花怜の腰を抱きながら施錠の音を鳴らした。

花怜はその音にびくっと身体を震わせた。

【もう……ほんとに戻れない……】

自ら扉を開いておいて、閉じ込められたような気分になる。

黒木は腰を抱き添えたままリビングへと向かった。
花怜はつられるように慌ててパンプスを脱ぐとそのままついて歩いた。

間取りにさほど違いはないように思えた。
壁のクロスやカーテン、配置された家具の色形は全く違う。
きっと黒木の奥さんの趣味が色濃く反映されているのだろう。
白を基調とした豪華な印象に思えた。

リビングを見渡した花怜は息を飲んだ。
壁際の戸棚は猫足のヨーロッパ調のクラシカルなデザインだった。
硝子戸の中には高級そうな洋酒の瓶が並んでいる。
その戸棚の上にはフォトスタンドが幾つも並べたられていた。
娘さんを真ん中に夫婦が立ち並んだ写真。
子供の成長の節目の記念写真がこちらを見つめているように思えた。

「気になるかい?…しまって置こうとも思ったんだが位置が変わると変に思われると思ってね…ただの写真だから気にしなくていい…」

黒木はそう囁き正面から抱き寄せてくる。
唇を重ねようと近づいてくると、花怜は顔を背けた。

「待って…待ってください……そんないきなり……っん……んん……んっ……ぁ……んっ……」

待ってくれない。
啄むようなキスを繰り返されていく。
上唇を咥えられ優しく吸われ離される。
下唇も同じようにされていく。
二人の鼻が重なると…互いに啄み合っていった。

【黒木さん…こんなキスをするんだ……】

義父がいる時は凄くがっつくような印象を持っていた。
しつこいほどに優しいキスを繰り返されると緊張が解きほぐされていく。
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