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縄師-Ⅲ 小父とM女。
第2章 彫り師、幽齋(ゆうさい)
元々幽齋の個人的な趣味の工房でもあり、俺には芸術の美を伝承出来るほどの腕も無い。
幽齋が死んだことが業界に伝わると、客が来なくなるのは当然だ。
俺は緊張の欠片も無くなり、毎日ブラブラしていた。
芳恵がきたのはそんな時だ。
「最初見たときは幽霊かと思ったぜ」
芳恵がフフフと笑う。
「帯は解けかけて、顔は眼の周りが痣だ、髪は半分崩れてるし足元は足袋だ。それでゆらりと俺の前に立った」
リョウの母親が「ヒャーッ」と悲鳴をあげたのでその声に爆笑した。
たしかに美人なだけに眼の痣と、今聞いた姿を想像すると不気味だったろう。
「今すぐお願い出来ますか。首の後ろに何か花でも」
「いや、奥さんそれは無理で無茶だ。一生背負うんだから、何かってことはないだろう。それに俺とこはタトウはやってねぇんだ」
たしかそんなことを言って断った。
「当時の主人と殴り合いの喧嘩して、そのまま車で出てきたのよ。絶対戻らないことを親の家元に判らせるために入れ墨しようと思ったの」
「殴り合いの喧嘩というのが俺は今でも信じられないが、相手の男は余程精神が未熟だったのだろうな」
「でも結果的には、彫らない方がいい結果になるという政数さんの意見のとおりにして私は慰謝料とお家を貰い、政数さんの奥さんにして貰いました。メデタシメデタシ」
そのメデタシメデタシが何故かおかしくて、だが芳恵の、「この話はこれでおしまい」と言っているのがわかったので、俺達はバーベキューの片付けをはじめた。
幽齋が死んだことが業界に伝わると、客が来なくなるのは当然だ。
俺は緊張の欠片も無くなり、毎日ブラブラしていた。
芳恵がきたのはそんな時だ。
「最初見たときは幽霊かと思ったぜ」
芳恵がフフフと笑う。
「帯は解けかけて、顔は眼の周りが痣だ、髪は半分崩れてるし足元は足袋だ。それでゆらりと俺の前に立った」
リョウの母親が「ヒャーッ」と悲鳴をあげたのでその声に爆笑した。
たしかに美人なだけに眼の痣と、今聞いた姿を想像すると不気味だったろう。
「今すぐお願い出来ますか。首の後ろに何か花でも」
「いや、奥さんそれは無理で無茶だ。一生背負うんだから、何かってことはないだろう。それに俺とこはタトウはやってねぇんだ」
たしかそんなことを言って断った。
「当時の主人と殴り合いの喧嘩して、そのまま車で出てきたのよ。絶対戻らないことを親の家元に判らせるために入れ墨しようと思ったの」
「殴り合いの喧嘩というのが俺は今でも信じられないが、相手の男は余程精神が未熟だったのだろうな」
「でも結果的には、彫らない方がいい結果になるという政数さんの意見のとおりにして私は慰謝料とお家を貰い、政数さんの奥さんにして貰いました。メデタシメデタシ」
そのメデタシメデタシが何故かおかしくて、だが芳恵の、「この話はこれでおしまい」と言っているのがわかったので、俺達はバーベキューの片付けをはじめた。