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 縄師-Ⅲ 小父とM女。
第3章  芳恵
 俺は油圧シリンダー付き寝台を140センチの高さにセットすると、芳恵に裸で仰向けに寝るよう、指示をして、シーツを被せた。

 芳恵の両腕を耳につくように上げさせ、脇の下から、乳房のふくらみをとおり乳首まで消毒した後、数針刺して様子を見た。
「大丈夫みたいです」
 芳恵は僅かに汗を滲ませて、そう言った。
「次は皆さんが1番痛かったと言う脇腹です」

 今度は筋をひくだけではなく、脇腹に鱗の模様を描いてみた。つぶしってやつだ。

肌に面相筆で書いたような赤いミミズ腫れの蛇が現れる。

 芳恵は途中2箇所で悲鳴を上げたが、「どうでしたか」という俺の問いには「大丈夫ですっていうか、全然平気です」と笑い、腰巻きを着けてシーツを肩にシャワールームに入った。

「確かに痛かったですが我慢出来ない痛みではありませんね。やっぱり私、不感症なんだわ」

自嘲気味にそう言って誓約書を書き始める。

「料金はその都度ですが、ローンでも低利でできますよ」

「いえ、慰謝料をしっかり取ってやるから大丈夫です。私のことを不感症とかいって1年以上もほっといたんだから」

「いや奥さんは不感症じゃないですよ。俺にはわかる」

「それはもうどうでもいいわ。これで寄ってくる男の方もいなくなるでしょうし、体裁だけで離婚させない主人の親も、この入れ墨の輪郭見ただけで腰を抜かすでしょうしね」

「奥さんは旦那さんと離婚したいの?」

「主人は家元のお下がりを愛人にして1年以上私をほったらかしにしてるんですよ。一緒に居られる訳がありません」 

 俺は誓約書の上に手を置いて書くのをやめさせた。

「奥さん。慰謝料取るなら墨入れちゃだめだ。脅す加害者ではなく、可哀想な被害者の立場にならなくちゃ。それに奥さんが感じなかったのは、旦那が下手で開発が遅れてるだけだろ。奥さん、あんまりオナニーとかしなかったんじゃない」
 
針で感じて濡れたってことは俺にはわかっていた。

 俺は芳恵を説得し、弁護士を紹介して帰らせた。
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