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縄師-Ⅲ 小父とM女。
第3章 芳恵
芳恵の背中を構図に沿って手で撫でる。
「ここに観音菩薩を彫る。表情はあんたの顔だ。
「はい」
俺が初めて彫る菩薩だ。
俺は芳恵の顔写真を画像処理して何十枚もの下絵を作っていた。師が彫るような色気はないが、芳恵も満足出来るものができていた。
俺の手は腋から乳房へ、蛇が動くように芳恵の身体を這っていく。
芳恵がと吐息を漏らした。
「丁度ここが子宮になる」
俺は下腹部に置いた手に圧力を加え、しばらく子宮を圧迫した。
芳恵の吐く息が徐々に不規則になり、手が宙を泳ぐ。
俺は背後に廻り、大蛇のように腕で胸を抱きしめる。
少しずつ力を加えると、芳恵が苦しそうに喘ぎ、何かが意識に混ざりはじめた。
「このまま絞め殺して呑み込もうか」
耳許で囁く。
「……足から呑んで……。咬まれるのを最後まで感じていたい。そのまえに全身を針で刺して……」
芳恵はブルッと身体を震わせ「怖い」と、再度言い、意識を戻らせた。
「提案だが意匠を少し変更しないか」
「どんなふうに?」
「墨だが、この肌に合わせた白が調合できそうだ。それで大蛇の頭から筋彫りする。鱗を埋めるのはもう一つの白、あんたの肌だ。それと舌が性器の赤。これで男根を呑み込む白蛇が完成する」
「その……男性のアレは彫るのですか」
「それ彫るとカテゴリーが変わるからな。彫らねえよ」
芳恵がクッと笑った。
「その墨は肌と同色にするから普段は見えない。だが興奮したり湯に入ったときは浮かび上がってくるんだ」
「素敵。是非それでお願いします」
構図そのものは芳恵が離婚を決意したとき、男に見せようとして選んだ構図だ。
確かにそんな刺青を見せられたチャラい男は、一目見て戦意を喪失するだろう。
だが今は離婚が成立してチャラ男にもその親にも見せる必要がなくなった。
なのに、その刺青を改めてこの女は彫りに来た――。
そのことが、何を意味するか。考えるまでもなかった。
「ここに観音菩薩を彫る。表情はあんたの顔だ。
「はい」
俺が初めて彫る菩薩だ。
俺は芳恵の顔写真を画像処理して何十枚もの下絵を作っていた。師が彫るような色気はないが、芳恵も満足出来るものができていた。
俺の手は腋から乳房へ、蛇が動くように芳恵の身体を這っていく。
芳恵がと吐息を漏らした。
「丁度ここが子宮になる」
俺は下腹部に置いた手に圧力を加え、しばらく子宮を圧迫した。
芳恵の吐く息が徐々に不規則になり、手が宙を泳ぐ。
俺は背後に廻り、大蛇のように腕で胸を抱きしめる。
少しずつ力を加えると、芳恵が苦しそうに喘ぎ、何かが意識に混ざりはじめた。
「このまま絞め殺して呑み込もうか」
耳許で囁く。
「……足から呑んで……。咬まれるのを最後まで感じていたい。そのまえに全身を針で刺して……」
芳恵はブルッと身体を震わせ「怖い」と、再度言い、意識を戻らせた。
「提案だが意匠を少し変更しないか」
「どんなふうに?」
「墨だが、この肌に合わせた白が調合できそうだ。それで大蛇の頭から筋彫りする。鱗を埋めるのはもう一つの白、あんたの肌だ。それと舌が性器の赤。これで男根を呑み込む白蛇が完成する」
「その……男性のアレは彫るのですか」
「それ彫るとカテゴリーが変わるからな。彫らねえよ」
芳恵がクッと笑った。
「その墨は肌と同色にするから普段は見えない。だが興奮したり湯に入ったときは浮かび上がってくるんだ」
「素敵。是非それでお願いします」
構図そのものは芳恵が離婚を決意したとき、男に見せようとして選んだ構図だ。
確かにそんな刺青を見せられたチャラい男は、一目見て戦意を喪失するだろう。
だが今は離婚が成立してチャラ男にもその親にも見せる必要がなくなった。
なのに、その刺青を改めてこの女は彫りに来た――。
そのことが、何を意味するか。考えるまでもなかった。