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 縄師-Ⅲ 小父とM女。
第3章  芳恵
「いッ……いきました。私の負けです。もう許して……」

「感じさせたという事で良いのだな。あんたの身体には、まだまだ淫らな悪魔が潜んでいる。針を打ち、それを見極めてからでもいいのだが」

 芳恵は離婚して自由へ解き放たれていたが、性についても、自分の中に幾つもの淫らな感覚があることを知り、それを開放しようとしていた。

 俺は幾つもの責めを試しながら、芳恵の内部から淫猥な感覚が噴き出そうとしているのを知った。

「私、自分がどれだけ嫌らしくて卑猥な人間かという事を初めて知りました。だから結婚していたときの普通のセックスに何も感じなかったのだわ」

「こういう性癖を嫌らしいと決めつけられる者などどこにもいないと思うがな。現にうちでは客の殆どがこの手の人間だ」
「でも、こんな経験すると、これからはもっと物足りなくなりそう」と呟くように言った。

「お約束ですものね。お望みのものがあればおっしゃって。ほんとうに充分以上に感じたわ。思い出すだけで胸がキュンとするの」

「くれるならあんたが欲しい」

「えっ……それはどういう」
「簡単に言うとあんたが好きになった。惚れたんだ。可愛いと思って抱きしめたときと、苦しむ顔を見たくて抱きしめたとき。以前は違っていたが、今はどんな抱き方をしても同じように可愛いと思えてしまう。つまりそういうことだ」

「つまり私をずっとこんなふうにすると……」

「もっとだ。しかも俺の専属で、だ」

「私に飽きないでくれます?」

「大丈夫だ。あんたの泣き声を聞き尽くしたら、次は悲鳴を聞き尽くすまで責めてやる。あんたの女性の部分は子を産むためではなく、女としてだけ存在させてやる。今から入れる刺青はその第一歩だ」

 施術台に寝かせた芳恵の革紐を引き、大の字にして目隠しをする。
 目隠しは針の痛みに集中させるために。口には手ぬぐいの猿轡を噛ませる。

 俺は面相筆で筋彫りの輪郭を入れていった。
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