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 縄師-Ⅲ 小父とM女。
第1章  小父の半生
「先ずだな、鍼と針は太さが違う」

 まあ、基本的なことだが、知らない者には興味がある話しだ。
 
「人間の皮膚表面を針の太さで見ると膜に見える。そこに汗腺やら毛穴やら神経があるわけだ。
 だがもっと細い鍼から見ると繊維に見える。鍼の先は丸くなっていて、繊維や神経をより分けて入っていくから傷が付かず痛くない。痛いのは筋肉のある部分に刺激を与えるときだがそれは痛みの質が違う。

 だが入れ墨の針は繊維を切って傷を付けたところに墨を入れていく。しかもタトウなんかの洋彫りと違って刺青は針を深くいれる。だから痛みが生じる」

 リョウの父親が、
「若い連中のタトウには文字やら模様がぼやけてよく分からないものがあるだろう。気になってるんだ」

「素人が機械で彫ったんだろうな。安くあげるために」

 母親が「お金はどれくらいかかるのかしら」と訊く。

「一回2~3時間。週に2回ペースで1時間1万から2万というところだ。俺の師匠は2万とっていて、よし乃は140万くらいかけていた。もっとも俺がやるようになってから師匠に敬意を払って時間1万に下げたけどな」

「でも結構な収入よね」

「でもない。客がそんなにいねえからさ。それに師匠は女しか彫らねえって看板かけてたし。彫り師になったのも女の身体を触るためだって人だからさ」

「じゃあ小父さんは秘伝を教えて貰って、女の人の刺青を最後まで完成させたってことだよね」

「手っ取り早く言やあそうだが、そんな簡単な話じゃねえ。弟子になるまで毎日下の世話から食い物の世話だ。夜中に2度身体を回して褥瘡(じょくそう)の予防だ。昼は筋肉運動のリハビリで、看護師に、介護士の資格あげるって言われたぜ」

「刺青に関係の無いところで苦労したんだ」

「いやそうじゃない。全てが復帰のために工房に戻るための準備だった」

 師は余命を告げられたとき「ああ、そうか」と淡々として受け入れたと聞いた。

 ただひとつ心残りは、やり残したよし乃の刺青だった。そこでよし乃は俺に目をつけて根回しをしていたということだ。
 
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