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縄師-Ⅲ 小父とM女。
第2章 彫り師、幽齋(ゆうさい)
余命。もって半年と言われていた師は、俺が弟子入りをするきっかけになったよし乃の彫りを俺に教えながら、1年半も長生きをしてこの世を去った。
納得の上とは言え、あそこまで女性をいたぶった師はさぞ疎まれているだろうと思い、師の遺言もあって、通知は誰にも出さなかった。
今夜は師と二人、静かに酒を飲み明かそう。
そう思っていた俺は、通夜になって驚いた。
何十人もの女性が現れ、勝手に葬儀を仕切ってくれたのだ。
「葬式のことは私達に任せて,マサさんは師匠(せんせい)の横で別れを惜しんでらっしゃい」
そう言ってくれたのは師の責めに泣いて俺に助けを求めた、ゆずはというクラブホステスだ。
次の日の葬式には、いったい何の祭りが始まったのかと間違えるほど、華やかな女性達が式場を埋め尽くした。
やがて焼香が始まると近隣の彫り師も姿を現し、それぞれ自分の知る幽齋のことを聞かせてくれたが、俺と師が思っていたような、彫り幽を悪く言う者はただの一人も居なかった。
それは出来映えの見事さと、師匠の愛すべきキャラクターのせいだ。
師は、「そりゃあそうは言っても、見た者を感心させなきゃ彫る資格はない。最低限、肌を提供してくれた者が人に見せて自慢出来るものでなくてはならん」という、矜持を持っていた。
よし乃の背中の曼荼羅と蓮華台の観音菩薩は、師匠と俺の共作として、また師匠の遺作としてよし乃の身体を彩っている。
「マサさんは彫り幽さんと、普段はどんなことを話してましたか。宜しかったら是非」
そう声をかけたのは、彫り梅という業界のドンと目される男だ。
医師会との軋轢もこの男が対処している。
「そうですね。只一度、私は師匠とクラブに行ったことがあります」
「幽齋さん、酒は飲まなかったのでは」
驚きの声が上がる。
納得の上とは言え、あそこまで女性をいたぶった師はさぞ疎まれているだろうと思い、師の遺言もあって、通知は誰にも出さなかった。
今夜は師と二人、静かに酒を飲み明かそう。
そう思っていた俺は、通夜になって驚いた。
何十人もの女性が現れ、勝手に葬儀を仕切ってくれたのだ。
「葬式のことは私達に任せて,マサさんは師匠(せんせい)の横で別れを惜しんでらっしゃい」
そう言ってくれたのは師の責めに泣いて俺に助けを求めた、ゆずはというクラブホステスだ。
次の日の葬式には、いったい何の祭りが始まったのかと間違えるほど、華やかな女性達が式場を埋め尽くした。
やがて焼香が始まると近隣の彫り師も姿を現し、それぞれ自分の知る幽齋のことを聞かせてくれたが、俺と師が思っていたような、彫り幽を悪く言う者はただの一人も居なかった。
それは出来映えの見事さと、師匠の愛すべきキャラクターのせいだ。
師は、「そりゃあそうは言っても、見た者を感心させなきゃ彫る資格はない。最低限、肌を提供してくれた者が人に見せて自慢出来るものでなくてはならん」という、矜持を持っていた。
よし乃の背中の曼荼羅と蓮華台の観音菩薩は、師匠と俺の共作として、また師匠の遺作としてよし乃の身体を彩っている。
「マサさんは彫り幽さんと、普段はどんなことを話してましたか。宜しかったら是非」
そう声をかけたのは、彫り梅という業界のドンと目される男だ。
医師会との軋轢もこの男が対処している。
「そうですね。只一度、私は師匠とクラブに行ったことがあります」
「幽齋さん、酒は飲まなかったのでは」
驚きの声が上がる。