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欲灯
第2章 奴隷女
「ほら、ご主人様の言う事、ちゃんと聞きなさい。・・・・・・あれ?」

胸ポケットをゴソゴソと探る堀井。

「あちゃあ、『火』失くしたわ。・・・・・・持ってない、よな」



「はい、タバコは吸わないんで。持ってな・・・・・・あっ」

何かを思い出し、目を見開く莉奈。

慌てて自分のバッグを探り出す。



「・・・・・・ありました」



堀井に渡したそのライターには白の林檎と黒の林檎が彫られていた。



「なんだ、持ってんじゃん。へえ、吸わないのに、ジッポねえ」

訝しげな表情を向ける堀井は、物珍しそうにライターを眺め、『キン』という音を立て、手慣れた仕草で火を灯した。



「あ、さっきの啓・・・・・・男の人の・・・・・・」

「ん?盗んだの?」

「いえ、借りたままで、忘れてそのまま・・・・・・」

「へえ。林檎のジッポねえ」

「はい。『禁断の林檎』だそうです」

「『禁断の』、ねえ」

深く吸い込み、真っ白な煙をゆらゆらと吐き出す。

「どうしよ・・・・・・」

「貰っちゃえばいいんだよ」

「でも・・・・・・」

「いいじゃないの。あ、じゃあ、莉奈が連れてきた男の子にプレゼントしよう」

鼻から煙を吐きながらニヤつく。

「そんな・・・・・・」

「おまえなら出来るだろ?良い子なんだから」

諭しながら莉奈の頬を優しく撫でる。

その手がタバコ臭くて莉奈は眉間にシワを寄せた。

「莉奈、俺はな、おまえと再会出来て本当に嬉しいんだよ」

「・・・・・・はい」

「あの頃、バレンタインには三年間、毎年チョコとラブレター。誕生日まで覚えててくれたのなんて、生徒の中ではおまえだけだったよ。嬉しかったんだ」

「・・・・・・はい」

莉奈の潤んだ瞳に光が戻ってきた。
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