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欲灯
第1章 浮気男
「あ、カラオケとか」
ようやく見せたその子の笑顔に『海辺のモデル美女』と勝手に心の中であだ名を付けた啓介は、「え、俺と?」と、つい綻んでしまう顔を堪えながら返した。
「あ、はい。すぐそこの・・・・・・」
自分の背中、彼女の指を指した方向に振り向くとカラオケボックスの看板が、昼の明かりにも負けずに雨を弾きながらネオンを光らせていた。
(ああ・・・・・・そういう事か)
冷静さを取り戻した啓介は、目の前の『海辺のモデル美女』の正体を疑い始めた。
(恐らく、ひとりで暇そうに歩いている男に逆ナンを装い声を掛け、カラオケボックスという名の『自分の職場』に誘い込む作戦だな。そりゃそうだろう、こんなモデル風のミニスカ姉ちゃんが、ちょこっと目が合ったくらいで逆ナンなんてしないだろうに)
「あの……」
彼女の声と目線に気付き周りを見回すと、雨宿りしているサラリーマン二人や、後から来た女性グループたちが訝し気な表情でこちらを見ていた。
「あ……そうだね、取り敢えず行きましょう!」
周りの、二人の言動を何事かと怪しむ視線から逃げたくなり、啓介は慌てて『海辺のモデル美女』をエスコートするように、雨の中に飛び込んだ。
「あの、別にカラオケじゃなくても、私はいいんですけど……」
3階にカラオケボックスのある駅の向かいのビルに入ると、雨をはらいながら申し訳なさそうに言った。
「いや、せっかくですから。俺も一服したかったし」
「そうですか。突然すみませんでした」
「いえいえ。ここの3階ですよね」
啓介がエレベーターのボタンを押し、すぐに口を開けた箱の中にふたりは入っていった。
ようやく見せたその子の笑顔に『海辺のモデル美女』と勝手に心の中であだ名を付けた啓介は、「え、俺と?」と、つい綻んでしまう顔を堪えながら返した。
「あ、はい。すぐそこの・・・・・・」
自分の背中、彼女の指を指した方向に振り向くとカラオケボックスの看板が、昼の明かりにも負けずに雨を弾きながらネオンを光らせていた。
(ああ・・・・・・そういう事か)
冷静さを取り戻した啓介は、目の前の『海辺のモデル美女』の正体を疑い始めた。
(恐らく、ひとりで暇そうに歩いている男に逆ナンを装い声を掛け、カラオケボックスという名の『自分の職場』に誘い込む作戦だな。そりゃそうだろう、こんなモデル風のミニスカ姉ちゃんが、ちょこっと目が合ったくらいで逆ナンなんてしないだろうに)
「あの……」
彼女の声と目線に気付き周りを見回すと、雨宿りしているサラリーマン二人や、後から来た女性グループたちが訝し気な表情でこちらを見ていた。
「あ……そうだね、取り敢えず行きましょう!」
周りの、二人の言動を何事かと怪しむ視線から逃げたくなり、啓介は慌てて『海辺のモデル美女』をエスコートするように、雨の中に飛び込んだ。
「あの、別にカラオケじゃなくても、私はいいんですけど……」
3階にカラオケボックスのある駅の向かいのビルに入ると、雨をはらいながら申し訳なさそうに言った。
「いや、せっかくですから。俺も一服したかったし」
「そうですか。突然すみませんでした」
「いえいえ。ここの3階ですよね」
啓介がエレベーターのボタンを押し、すぐに口を開けた箱の中にふたりは入っていった。