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鬼の哭く沼
第6章 朔月に濡れる赤

第一、貴蝶はどうやってあの妖たちを引き入れたのか。開放的に見えて、実は九泉楼の警備は固い。手引きした誰かが居るだろうと九繰も疑っていた。
つい先程初めて知らされた事だが、楼閣に灯されている行灯や提灯には青火という妖がいくつか潜んでいるのだそうだ。青火は火として灯りを出すだけでなく、広い九泉楼の「目」の役割も担っている。何事か異常が無いか監視し、事が起きれば主たる須王へと報告が上がるのだという。

(つまり、ここへ来た時からずっと私も監視されていたってことか…)

当初、外へ出るなと煩く口に出す割に監視の目が緩かったのはそういう事だ。香夜を信用してしなかったのではなく、その必要が無かったのだ。確かにいつ逃げ出すかもわからない相手を手元へ置いておくのに何も手を打たない筈が無い。だから別にそれ自体は良い。…いや、良くは無いが。少しだけがっかりしたのは事実だ。

ともかく、その青火に何者かが特殊な油を与えたらしい。青火は限りなく弱り、須王への報告など出来ぬ程に小さくなっていたという。
だというのに何故、あの時間、あの場所で香夜が襲われていると分かったのだろう。「目」は使い物にならなかった筈だ。双子が起きて、香夜が居ない事に気づいて知らせたのか。いや、それは違う。先程泣きながら「気付かなくてごめんなさい」と謝る二人の言葉からも、それは証明済みだ。

ぐるぐると頭の中を疑問が回る。棒切れで脳みそを掻き混ぜられているみたいだ。まとまりが無くて、苛々する。
ぎゅっと目を閉じて大きく息を吸った。木で出来た浴槽の壁に背を預けたまま、滑らせるようにして身体を沈ませる。湯の中へ顔の半分まで沈めてゆっくり息を吐く。ごぽごぽと音を立てて湯面に泡が立った。

違うのだ。

苛々の原因は、考えても香夜には分かりそうにない事柄の答えが知りたいからではない。知りたいのはもっと別の事。どんなに他の考えで頭を悩ませ誤魔化そうとしても自分に嘘はつけない。最終的に、「何故」はたった一つの同じ疑問にぶち当たる。
顔を沈ませたまま手を伸ばし、浴槽の淵に置いておいたものを湯の中へと掴み引き寄せた。



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