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鬼の哭く沼
第2章 宵ヶ沼
「逃げなかったのは誉めてやる」
逃げなかったのではなく逃げられなかった、が正解だ。
風呂から上がり、この部屋に放り込まれた後一人きりになった香夜は当然の如く逃げ出そうとした。そろりと襖を開けて外に出た所を両脇から掴まれたのだ。あの、双子の少女たちに。
ねね様は何処に行かれるの?と無表情のままユニゾンでこちらを見上げた双子はそれはもう怖かった。そして小さな子供とは思えない程の怪力だった。今もまだ、掴まれた両手首がじんじんしている。
指示したのは自分だろうに。
逃げられなかった理由を知っていて言う性格の悪さに眉を寄せると、雰囲気で察したのか背後で小馬鹿にしたように鼻を鳴らされた。
「お前は運がいい」
どこがだ、と振り返らずに心の中で毒づく。
「俺はイロを大切にする男だからな…俺を楽しませてさえいれば、金でも玉でも着物でも何でも望むものをくれてやる」
「っそん、なの要らない……ひゃっ!」
いきなり髪を触れられる感触がして、緊張していた所為か妙な声が出る。後ろ髪が軽く引っ張られて、手遊びをするように指が絡みついた。しゅるり、と衣擦れの音がして逞しい腕が腰を抱く。軽々と身体が浮いて、酒呑童子の膝の上へ降ろされた。
薄い着物越しに背に硬い胸板を感じ、カッと全身の熱が上がる。
「っ……や…」
髪を弄んでいた手がそのまま髪を掻き上げ項を露わにし、そこへそのまま顔を埋められる。湿り気を帯びた吐息が首筋にかかり、熱い唇が押し当てられびくりと肩が跳ねた。
「甘いな…血の香りか、肉の香りか。お前の肌は酷く甘い匂いがする」
肌に唇をつけたまま低く囁かれ、ぞわりと鳥肌が立つ。腰を抱えていた手が香夜の胸を襦袢の上から乱暴に鷲掴み、揉みしだく。小振りな乳房は酒呑童子の大きな手の中で弄ばれ、形を変えた。
「ぅう……!」
「思ったより小さいな…まあ良い。俺が育ててやろう。それもまた一興…」
袷の隙間から差し込んだ手で、直に膨らみを撫でられて身体が震える。