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鬼の哭く沼
第2章 宵ヶ沼

「…お前、名は」

「…っふ、く…香夜…」

「カヨ。どういう字を書く」

「か…おる、夜…」

「香る夜…香夜、か。良い名だ」


手を戒しめられて涙も拭えず、顔をぐしゃぐしゃにして香夜は泣く。そんな香夜の目尻に唇を寄せ、酒呑童子はこめかみへ伝い零れる水滴を舐め取る。そのまま頬擦りをするように首筋へ移動し、震える咽元へ強く吸いついた。




「俺に、愛される事を受け入れろ。お前は俺のものだ、香夜」




肌に散る赤い花。

所有印に目を細め、するりと手の平が首筋から乳房へ流れて柔らかな肉を愛撫する。顔を伏せたまま、酒呑童子は鎖骨、胸へと唾液を纏わせた舌を滑らせていく。白い肌に唾液の湿った痕が轍のように残り、行灯の灯を受け妖しく光る。完全に肌蹴た赤い襦袢の合間で震える乳房を寄せるように掴み、尖った先端に舌を這わせた。


「は、あ…っ」


きつく目を閉じた香夜の口から熱の籠った吐息が漏れる。
その反応を見て目を細め、今度は薄く色づく乳輪を円を描くように愛撫する。ぴちゃぴちゃとわざと音を立てて、乳輪の縁から中心へ螺旋状に舌を這わせ最後に突起に吸いつくと香夜が小さく声を上げて震えた。


「心地が良いか」

「……っ、よく、なんか…」

「そうか」


ふ、と笑う気配がし今度は乳房の先全てを飲み込まんばかりに吸われて悲鳴のような声が上がる。ぬるつく熱い舌が肌を縦横無尽に舐め回し、時折舌先を尖らせ突起の先端を強く擦っては再び吸い上げる。


「あ、あぁ…っや…」


さあっと肌に朱が交じり、香夜はいやいやと首を振った。
生まれて初めて受ける行為が、香夜の背筋に甘い痺れをもたらす。身体がざわざわと熱をもって疼き始める。


強引に犯されようとしているのに反応してしまう自分自身に嫌悪が込み上げた。だが、酒呑童子の愛撫は巧みで、香夜の思考を容易に溶かしていく。

一方の酒呑童子もまた、香夜の肌を舐めながら己の内の熱に酔っていた。
愛撫を与える度、漏れる吐息や朱を帯び汗ばむ肌から芳しい甘い香りが立ち上り鬼の本能を刺激する。どんな美酒よりも脳を酔わす、妙なる香り。

それをもっと味わいたくて、より強い香を放つ場所へと手を伸ばした。






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