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鬼の哭く沼
第4章 それぞれの思惑
そう言った九繰に提示された案は単純明快。惚れた側が負け。つまりは相手を誘惑し、惚れさせよという事だ。
単純だが、簡単な事ではない。
第一、この胡散臭い狐の言葉を信じて良いものかどうか未だ判断が付きかねるが、それでも「帰れるかもしれない」という希望に乗ってみる価値は、ある。
「……わかり、ました」
しばし下を向いて考え込んでいた香夜の強張った声音に、はしゃいでいた雪花と風花が不思議そうに顔を見合わせている。二人の髪を撫で、そのまま自分の着物の膝をぎゅっと握りしめて顔を上げた。
「━━━ その賭け、乗ります」