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鬼の哭く沼
第4章 それぞれの思惑

耳慣れない言葉を耳にして意味を聞こうと振り返るも、「しっ!」と指で唇を押され大人しく黙る。


「じゃあ一体、何の用だってんだい」

「何、面白い話を耳にした故な。それを確認に参ったのじゃ」

「面白い話?」


訝る夕鶴に、ふん、と尖った顎を持ち上げて貴蝶はぐるりと部屋を見回す。そうして、夕鶴の背後から顔半分覗かせて己を伺う香夜の姿を見つけた。


「楼主様が、子猫を拾われたそうさな。ガマ福が吹聴して回っておったわ。しかもその子猫をそなた等が連れ込み、何やら画策しているようだと青火が知らせに参っての」


その言葉に、夕鶴が小さく舌打ちをする。「あの野郎、いらん事を」と低く罵る声がすぐ傍に居る香夜に届く。ガマ福は行商の蛙の名だ。誰が自分の話を有る事無い事広めたのか合点がいった。


「これ、そこな小娘」


威圧的な口調で香夜を指し示し、射抜くように冷たい目を向ける。


「お前が香夜とやらかえ」


むっとしたが、取り敢えず頷く。その反応に小馬鹿にした薄笑みを浮かべた貴蝶だが、香夜の胸元に揺れる蝶飾りを目にすると憎々しげに顔を歪めた。


「その色…蛙の話は誠であったか…猫は猫でも、泥棒猫とは。ほんに卑しい事…どのような手を使って楼主様に取り入ったのか知らぬが、高価な物ばかり口にされる故貧相な物が珍味に思われただけであろう。そうでなければあの御方がそなたのような小娘に構う筈も無い」


ようは、嫉妬だ。

この貴蝶という女はかつて須王の愛人であったのだろう。かつて、がどれ程前の話かは不明だが、口汚くあれこれと並べ立て香夜を扱き下ろす姿は嫉妬に狂う女の姿そのものだ。
いつか脳裏を過った、他の女を抱く須王の姿。その女が脳内で貴蝶の顔になったが不思議と何の感慨も湧かない。むしろ如何に自分が須王に相応しいのかを口にするこの女に、怒りよりも憐れみを感じる。
だが、香夜への罵詈雑言の中に混じる明らかな夕鶴達への色濃い侮蔑には、香夜の胸にもやもやしたものが広がっていく。

(どんな理由があったって、こんな言い方される謂われは無いのに)

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