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鬼の哭く沼
第5章 忍び寄る影
この娘を己の色に染めてやりたい。ゆっくりゆっくりと毒し、和紙に墨が染みるように汚してしまいたい。己だけを求め、組み敷かれ喘ぐ姿を想像するだけで下腹が張り詰める。
『須王』
己の名を呼ぶ、声。水を孕んだ肌、蕩ける果実のように甘い秘蜜。過日の香夜を思い返し、ざわりと首筋に熱が上がる。はあ、と吐息を漏らして顔を伏せ柔らかな頬に舌を這わせた。そのまま顎の形をなぞるように舐め、耳朶へと移動する。眠っている香夜の身体がびくびくと小さく震え、吐息に混じる甘い香りがより濃いものへと変わった。
「…っ、…お…」
「………」
震える微かな声。起きてしまったのか、それともまた「オオノ」とやらの名か。愛撫に女が無意識で呼ぶ名など、恋人か愛しい者の名だけだ。胸に宿る苛立ちと共に感じる焦燥。けれど息を詰め固まる須王の耳に届いたのは、予想外の名前だった。
「…す、おう……」
「………っ…!」
弾かれたように胡坐をかいて座り直し、眠る香夜を凝視する。薄く開いた唇。それはたった今、間違いなく自分の名を呼んだ。くっと痛みに耐えるように眉間に皺を寄せ、伸ばした手をきつく握り締めて衝動を堪える。呼気を上擦らせ、香夜を見つめながら着物の裾を割って自分の欲望の塊を取り出した。すでに脈打ち硬さを蓄えつつあるそれを掌で握り込む。そのまま上下に数回扱くだけで、先端からは透明な先走りが滴った。
「…は……っ」
ごくりと咥内に湧く唾液を飲み込む音が、静かな部屋に異様に大きく響く。今すぐに、滅茶苦茶に抱いてしまいたい。けれどまどろむ香夜を起こさぬよう、須王は呼気を抑えて指先で先端を押し潰す様に円を描いて擦る。亀頭から溢れた体液がとろりと指を汚し、それを掬って熱い昂りに塗り付けた。
何故。どうして自分の名を呼んだ。
問うても答えは返らない。言いようのない感覚に全身に鳥肌が立って、須王は唇を噛んだ。
「香夜、…っく…」
瞼を閉じ浮かぶのは淫らに悶える香夜の顔だ。些細な刺激にすら大きく反応する未熟な肢体。未だ侵入を果たしていないその香夜の胎内を思って、喉が鳴る。秘肉はさぞや柔らかく、須王の熱を包み蠢くに違いない。想像し、いっそ喰らい付きたい程の衝動に生唾が咥内を満たしていく。