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鬼の哭く沼
第6章 朔月に濡れる赤

太股に、猿の爪が食い込む。力技で開かれた両足の間に今にも突き立てられようとする青黒い剛直を見て、口の中の帯を心底邪魔だと思った。この帯が無ければ、舌を噛み切る事だって出来たのに。
悪夢のようなこの状況が全て夢であれば良い。双子に挟まれた布団の中、汗だくで目覚めて何てくだらない夢なのかと笑えたら良いのに。それが出来ないなら、いっそ。薄れゆく意識に身を任せ、全てを拒絶しようと香夜は硬く目を閉じた。


ドン、という轟音と共に狭い部屋全体が揺れた。と同時にバキッと木のへし折れる音が続き、次いで何かが吹き飛んで壁にぶち当たり、木端微塵に砕ける音。
朦朧としていた香夜の意識を一瞬で引き戻す程の凄まじい衝撃が、床を伝って身体を震わせる。

何。一体、何が起きた。

驚いて開いた目に入ったのは、戸口から巨大な影が飛び込み香夜に覆い被さっていた化け物を弾き飛ばす光景だ。ぐしゃりと、肉の叩きつけられる嫌な音が部屋の隅で鳴った。

「まったく、乱暴な奴よのう…香夜に当たりでもしたらどうする気じゃ」

茫然と目の前の出来事を眺めていた香夜の耳に、のんびりとした声が聞えた。ぷつりと軽い手応えの後、手足を縛っていた戒めが解ける。

(だ、れ…)

声の主は自由になった手で己の身体を庇うように抱く香夜へそっと自分の上掛けをかけてくれた。口を塞いでいた帯も取り除かれ、ようやくまともに呼吸が出来て激しく噎せる。一呼吸ごとに意識がはっきりとしていく感覚。部屋中に充満していた甘ったるい匂いが薄れたからだ。新鮮な空気が部屋の外から入ってきたお陰だろう。見れば木戸のあった場所と、その周辺の壁にぽっかりと大穴が空いている。先程反対側の壁に吹き飛んで粉々になった何かの正体は、この木戸と壁の欠片に違い無い。


「大事はないかのう、香夜や」

「っ、く…くり…げほ、ごほっ!」


覗き込んだのは美しい白銀の髪の狐。助けてくれた相手の名前を呼ぼうとして失敗する。乾いた喉に呼吸が引っかかり、香夜は涙を零しながら咳き込んだ。苦しげに身体を折って蹲る香夜の手足から、慌てたように布が離れて行き床を這って戸口目指し逃げていく。だが当然それを許す九繰では無い。千々に千切られのたうつ布を醒めた目で一瞥し、右手を振って軽く虫でも払う様な仕草をする。その刹那、蠢く布はぼっと音を立てて青白い火に包まれ瞬く間に消し炭になった。


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