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碧い雨の夜に…
第5章 【不変的に……】
「教えろよ、ていうかその顔は初めてではないって顔だな」
酔っ払ってるくせにその鋭さは健在で。
チラッと初めての相手を思い浮かべてたらベッドに押し倒された。
「ダメ、思い出すな、そいつのことは忘れて?無理、俺が無理…!」
「ちょ、ちょっと何?重いよ、痛い」
手首掴まれて起き上がれない。
恐る恐る目を合わせたら心臓がドクンと波打った。
なんて顔してるのよ。
今にも泣きそうな、悟られまいと一生懸命繕ってる。
「頼むから……今は俺以外考えないで」
そう言ったら大粒の涙が落ちてきた。
いつもなら「なに泣いてんのよ」って言えるはずなのに、あの時のアキラにはふざけたり一切出来なくなってた。
一瞬のうちに惹きつけられていた。
言葉を失っても戸惑いも怒りも全部薄れていくばかりで。
本当、どうしちゃったんだろうって思う。
アキラには気持ちないはずなのに。
どうしてこの時。
目を逸らさずに、アキラからのキスを受け入れてしまったんだろう。
掴んでる手が私の手に重なり指を絡め合う。
こういうの一切ないって言ったのに。
観念しちゃったキスだった。
気の済むまで食べて良いよ……なんて器じゃないけど。
どうせ酔ってるからって片付けちゃっても良いのかな。
ちょうど私もムラムラしてた。
彼氏と別れて結構経ってたし。
丁度いい時期が被っただけ。
アキラのキスは初々しかった。
強引なんだけど、舌が入ると優しい。
ゆっくり確かめるように絡めてくる。
私が動くと引っ込めちゃう。
酔いもそろそろ回ってきたのか。
グイと回転して上下逆転した。
私がアキラを上から見下ろし、前髪をかき上げ、こう言ったの。
「ヘタクソ」
「え…?」
豆鉄砲食らったような顔にクスクス笑って、私から再び絡めにいった。
残ってるアルコールのせいにして、馬乗りになり、アキラとキスしたの。
どうかしてたって後でいくらでも言えるって最低なことを思いながら。
唇離れたら、あまりにもトロンとした目をしてるから新たな顔を見れた感じで抑えが効かなくなる。
自分でも驚いてる。
アキラだよ?相手は。
私、何してるの?って。
今ならまだ引き返せる。
友達じゃなくなっちゃう。