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激しくしないでっ!
第4章 れっつぷれい!?

 彼女は怒っているんじゃない。泣いていたのだ。

 声はかすれて嗚咽が混じり始めていたし、彼女の細い肩も、小刻みに震えていた。

 どうして最初に声をかけられた時に気付けなかったんだろう。彼女の声のトーンの低さも、きっと泣くのをこらえていたからだ。


「……ごめん」


 口下手な俺は言葉で弁解することがなかなかできず、歯痒い思いに駆られる。

 そういう意味で涼川さんを無視してたんじゃない、その誤解だけは解きたかった。


「涼川さん」


 俺は彼女に駆け寄った。

 涼川さんは不自然なほどうつむいていて、顔をあげてくれない。カバンを両手に持っているから、泣き顔を手で隠すこともできず、そうしているのかもしれない。


「誤解だよ。俺が涼川さんを避けてたのは、その……」


 一拍だけ間をあける。


「下心のある自分が嫌だったんだよ……」


 ああ、本当に情けない。


「下心?」


 涼川さんが顔をあげる。目がわずかに充血していて、まなじりには涙が溜まっていた。


「涼川さんは俺の手首に、ちゃんと興味を持ってくれてたろ? 純粋な興味を」
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