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激しくしないでっ!
第7章 エピローグ

「だって、ずっと憧れていた尚人くんの手首が、目の前にあるんだもの」

「はいはい、良かったね。あ、てかほら、そっちだってくん付けしてる!」

「私はいいの。男の子を呼び捨てになんてできないもん」

「……なんだよそれ」


 俺はなんだか脱力してしまって、結局それ以上言葉は続かなかった。

 裕美ちゃんと付き合い始めて一ヶ月ちょっと経ったけど、いまだに彼女の性格は謎な部分ばかり。一割だって掴めていない。

 手首フェチなの? それとも緊縛フェチなの? SなのMなの? これは、性格というより性癖か。

 そんな裕美ちゃんに、俺はいつも翻弄されっぱなしだ。

 その時、ふいにドアの外に人の気配を感じた。こんこん、と二回ノックされる。


「裕美ー、入るわよー」

「はーい」


 ドアが開き、部屋の前ではトレイを持った彼女の母親が立っていた。

 俺はつい緊張し、体をこわばらせてしまう。


「こ、こんにちは。お邪魔してます」

「いらっしゃい」


 いつ見てもよく似てる。高校生の子供がいるとは思えないくらい若いし、美人だ。


「マドレーヌ焼いたの。良かったら食べてね」
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