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第13章 ３人目〜高城礼奈～

『やっぱり家賃のことか…。』

突然、大家が話があると訪ねて来るには理由があるはずで、その理由に高城は心当たりがある。

「最初からご存知だったんですか？私がここに住んでたこと…？」

無駄だと思いつつ、はぐらかすように狩野に聞く。

「知ったのは１週間ほど前ですよ。それまでは全く…。知ってたら、もうちょい気安く話してますよ…。」

狩野は苦笑いしながら答える。高城はギュッと膝の上で手を握り、思いきって聞く。

「今日はどのようなご用件で…？」

いつになく真剣な表情を浮かべる高城。その現れた表情が美しいと思いつつ、狩野は答える。

「家賃が滞ってる人がいると聞いてね…。よくよく聞くと、高城さんの名前が出てきてね…。」

狩野の言葉に俯く高城。いつも感情が出ない高城が初めて見せる普通の反応。それを見ながら、『この人も普通の娘なんだな…。』と狩野は思う。

「今まで、何回も滞っていると、そして、今月も…。」

「す、すみません。すぐに払いますから…。」

「立ち入った話になるけど、このアパートの家賃が払えないほど、コンシェルジュの給料悪くないよね？どうして？一応、大家として聞いておきたいんだけど。」

「それは…。」

高城は俯き、何も言わず、ジッと手を握り締めている。

「大した理由がないなら…こっちも考えなきゃならないんだ。最終的には払ってくれてるとは言え、ちょっと滞納の回数が多いから…。最悪出て行ってもらうことも考えなければいけない…。」

狩野の言葉にハッと顔を上げる高城。立ち退きさせられる可能性があることに言及され、唇を噛みしめる。

「次からは気をつけますので、それは…。」

高城は狩野に頭を下げる。今の職場から歩いて行ける距離。何より引っ越し費用を今準備できる自信もない。

「高城さんもコンシェルジュならわかると思いますが、滞納する人の次って言葉は信用できないんですよ。残念ながら…。」

狩野の言葉に再び俯く高城。狩野の言葉は確かにその通りなのだ。言い返すこともできない。

「理由は話してもらえませんか…？」

狩野は辛抱強く待つ。しかし、高城は俯いたまま、答えない。いや、答えられない。


狩野は改めて高城を見る。いや、本当には「高城」ではなく、「松本」だ。狩野の前にいるのは「松本礼奈」だ。

狩野はこの１週間で礼奈のことを調べ尽くしていた。