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タワマン〜墜ちた女達〜
第4章 1人目〜伊藤晴香〜
「狩野さん、これは私が片付けておきます。割ったのは狩野さんですが、片付けは私達、コンシェルジュの範疇です。お二人も戻られて大丈夫です。」

高城が割れた壺の前に立ち言う。

「ん?なら、伊藤さんがやってる掃除は止めないの?なんで?伊藤さんが掃除しているところ、よく見るけど。」

狩野が疑問を口にする。

「そ、それは…。私が…。」

「伊藤さんに関してはやりたいとの申し出を受けておりますので。こういった不慮の場合は私の仕事です。住民の方に手伝わせたら、減俸ものです。」

「なるほど。わかりました。では、高城さん、よろしくお願いいたします。」

「よ、よろしくお願いします…。」

狩野が高城に頭を下げると、成り行きを見守るしかなかった晴香も頭を下げる。それに対して高城も頭を下げる。

「今後はこのようなことがないようにお願いいたします。では、どうぞ。」

高城は素早くエレベーターのボタンを押し、二人を誘導してくれる。狩野と晴香はペコペコしながら、エレベーターに乗り込む。

扉が閉まった後、狩野は急に真剣な表情で晴香に言う。

「この後、時間がありますか?私の部屋で今の件で話したいことがあるので…。」

「は、はい。あ、ありがとうございました。時間なら…全然…大丈夫です!」

晴香はもちろん狩野にお礼をしたいと考えていて、話すことに異論はない。狩野の部屋には1度行っていて、特に違和感はなかった。

「では、30分後に来ていただけますか?ランニングで汗かいて着替えたりしたいので…。」

「わかりました。本当にありがとうございます。」

すぐに晴香の住む4階にエレベーターは着いて、晴香は下りる。エレベーターの扉が閉まる寸前、残った狩野の顔が狂気に歪むのに晴香はお辞儀をして気がつがなかった。

狩野はこの時には悪魔に魂を売る決意をしていた。晴香が壺を割った瞬間、狩野の常識的な何かも音を立てて崩れたのだ。狩野はこの1ヶ月の間で妄想してきたことを、実現できるチャンスを掴んでしまったのだ。

引っ越してきて、出会った美人な人妻達。その個性豊かな人妻達をベッドの上で乱れさせる妄想をしていた狩野。1度掴んだチャンス。狩野はそれを離すつもりはなかった。妄想を現実へと変える。欲望の限りを尽くすと決めた。

狩野は晴香を足がかりに、会議で見て気に入った女性全員を手に入れるつもりだった。
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