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第21章 ４人目〜椎名風花〜

そんな必死に奮闘する風花に同情する。しかし、狩野はそれを使ってさらに風花を追い詰め、自分のものにしようとしているのだ。自分でも救いようがないとも思う。それでも、狩野は自分の奥底から湧き上がる欲望には勝てなかった。

狩野が爆弾を投下する。

「確かに自分の父親が横領しているとなれば、体調が悪くなるのも仕方ありませんよね。」

その言葉を聞いた瞬間、風花の目が大きく開く。蠱惑的な唇がゆっくり開き、何かを紡ぎ出そうとするが、果たせずに再び閉じられる。
かなりの時間が経過してから、ようやく再度唇が開く。

「…狩野さん…。あなたは何を知っていて、何が目的…？」

狩野の言葉を否定も肯定もせず、風花が探りを入れてくる。狩野は余計な駆け引きなどしないつもりだ。そういうのはホステスの風花のほうが上であろうから。狩野はストレートに話していく。

「私が知っているのは、風花さん、あなたの父親の椎名一樹さんが海外投資などに失敗し、その巻き返しに多額の会社の金を使い込んだこと。そのことがバレそうになったので、自分の資産を売却して金の工面をしているが、それでも足りず、風花さん、あなたも手伝って金を工面している状況というところですかね。足りない金額はざっと見積もって、数億円ってところでしょうか？」

一気に狩野が知る情報を吐き出す。風花は狩野の言葉を驚愕の表情で聞いていた。まだ世間にも知られていない情報。会社の中でも一部の人間しか掴んでいないはずの情報。それを何故か同じマンションの住民が知っている。風花にとっては恐怖でしかないだろう。

「そんな話をどこから…？あなた…そういえば、電報堂の社員だったわね…。辞めたって言うのは嘘…？」

風花が狩野をきつく睨みながら苦々しく言う。どうやら風花は狩野が電報堂がライバル会社を蹴落とすために送り込んだスパイとでも思っているようだ。

「ああ、そういうことではないですよ。電報堂は辞めてますし、この話には関係ないです。」

「じゃあ、何なの…？いったい何が目的…？」

風花の眼光が鋭くなる。まだ26歳。自分より年下の風花だが、気高く圧倒的なオーラを纏う。そんな彼女を無理やり犯し、自分のものにする。そんな欲望がフツフツと湧いてくる。今すぐ押し倒したい気持ちを堪える。

「私はシンプルにあなた達父娘を助けたいと思ってるだけですよ？」

「私達を助ける…？」