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タワマン〜墜ちた女達〜
第25章 狩野の日常④
『やはり何かあるな…。美夜との関係にヒビが入っている状態なら付け込む隙はある。美夜に心酔しているなら、大した情報は引き出せないだろうが…悩みがあるなら、何か話してくれるかもな…。』

狩野がそんなことを考えていると、タクシーがホテルに着く。狩野達はそのホテルにある有名フレンチのお店に入る。

「では、改めて再会を祝して、乾杯!」

「乾杯!あっ…、これ…美味しい♡」

2人はワインで乾杯する。佐藤はワインの味にニコニコしながら飲む。

「佐藤さんって、お酒強かったっけ?」

「そこそこ飲めますよ?狩野さんは?」

「俺もそこそこかな…。晩酌なんかはあまりしないから。」

「私も晩酌はあまり…。でも、こんな美味しいワインなら、飲み過ぎちゃいそう…。」

2人で他愛のない会話をしながら、楽しく食事をする。有名店だけあって、フランス料理のコースは美味しかった。
コースだけで1人2万円近い。ワインの値段もそれなりだ。これを情報収集を目的に自腹で払える自分が怖くなる。以前の自分なら恋人との記念日すら、連れて来られたか怪しい。

佐藤は特に疑いもなく、旧知の仲を温めるためと考えているのか。狩野に下心があっても上手く躱して、食事を楽しむだけ楽しんだら帰るつもりか。それとも狩野の誘いを待っているのか。その意図はまだわからない。

改めて向かいに座る佐藤を見る。ゆるふわパーマで、ほんの少しだけ茶色に見える髪。ナチュラルメイク風ではあるが、最大限に自分の魅力を引き出す化粧。ネックレスやピアスは落ち着いた小さめのもの。少し高めのスーツ。

昔の佐藤からはあまりにかけ離れている。昔の佐藤は真っ黒な髪をベリーショートにし、化粧っ気もほとんどなかった。今日はスカートを履いているが、昔はパンツスーツしか着ていなかった。何より男性にも負けないと片意地張った尖った印象が完全になくなり、柔らかな笑みを浮かべる雰囲気に、狩野は本当に佐藤か疑いを持つほどである。

「どうかしました…?そんなにジッと見られたら…。」

恥ずかしいのか、酔いのせいか、頬を赤らめて佐藤が言う。

「ああ、すまない…。本当に印象が変わったなと思って…。雰囲気がとても柔らかくなって。昔の佐藤さんはかっこいいけど、今は可愛いって感じで…。」

「そ、そんな…。かっこいいとか、可愛いとか…。そんなことないですよ…。」
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