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タワマン〜墜ちた女達〜
第28章 6人目〜柊美夜〜
結婚式の夜、まさしく初夜を迎えた美夜。夫の男性は上手くもない下手でもない普通の行為だった。処女だった美夜にとってはただ痛いだけの時間になった。

それでも最初の1年は普通の新婚生活だった。夫も毎日のように美夜の身体を求めてきた。変わったのは結婚してから1年が過ぎた頃からだった。

夫の帰りが遅くなる。夜の営みが減っていく。最初は単に忙しいと思っていた。事実、夫は結婚後、正式に跡取りとして副社長に就任し、その手腕を遺憾なく発揮し始めていた。

夫とすれ違う毎日。そんな毎日が1年続いた。今の美夜からすればよく我慢したと思う。

夫が浮気しているとわかったのは偶然だった。その頃の美夜は夫と同じ会社にポジションを与えられ働いていたが、たまたま休憩室で、男性社員数名が雑談しているところに出くわす。

「柊副社長っていいよな〜。社長令嬢の美夜さんゲットして、トントン拍子に出世して…。」

「ああ、あんな綺麗な美夜さんと毎日…。羨ましい〜。」

美夜、自分の名前が出てきたことに思わず身を隠す。まだ男性社員達は美夜に気づいていない。美夜は夫も美夜も褒められたと嬉しく思う。しかし、次の言葉で地獄に落とされる。

「ああ、しかし、あんな綺麗な奥さんいて、事務の佳代ちゃんにも手を出してるらしいじゃん?」

「やっぱりあの噂本当なのか?佳代ちゃん、清楚でおとなしい子だけど…。」

「ああ、営業の奴が2人で歩いてるとこ見たってよ…。タイプの違う娘と遊びまくってるんじゃね?」

「かぁ〜。いいなぁ〜。」

美夜は愕然としながら、そっとその場を離れた。泣き崩れそうになるのを必死に堪えた。帰って調べてみると、「佳代」という女性のインスタには確かに夫の存在を匂わせる写真があった。

夫を問い詰める美夜。夫ははぐらかし、頑として自分の浮気を認めなかった。それから、夫婦の生活は冷え込んでいく。

美夜は両親にも訴えた。しかし、両親は困り顔で頷くだけで、何もしてくれなかった。すでに夫は社内での影響力を拡大していて簡単に首にすることも、美夜との離婚もさせられる状態ではなかったからだ。

美夜が初めて経験する裏切り。それは大いに美夜を傷つけ、そして強くした。男性嫌いもこの時から始まった。

美夜は夫と決別し、親とも決別し、1人で強く生きることを決意したのだ。仕事に邁進し、独立、自分の会社を立ち上げる。
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