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タワマン〜墜ちた女達〜
第4章 1人目〜伊藤晴香〜
晴香は服を着ながら自分の身体を見下ろす。未だ下腹部には甘い余韻が残っている気がする。晴香が望めばもう1回くらい抱いてくれるだろうか。そんなことを考えながら、先ほど使った雑巾で再びソファと床を掃除していく。

一通り掃除を終えて、狩野が目覚めていないことを確認した晴香は、今度は冷蔵庫を開けてみる。1人暮らしの割りにいろいろ食材が入っている。
何を作ろうかと考えた時にはたと気づく。狩野の好き嫌いなどがわからない。あれだけ濃厚に身体を重ね合った割りに晴香は何も狩野のことを知らないことに改めて気づく。

『これから知る機会があるよね…。これからも…抱いてくれるかな…。でも…たぶん…私が独占できる人じゃない…かな…。』

晴香はなんとなくそう思う。晴香が夫と別れて、狩野と一緒になることなどできない気がするのだ。晴香自身、今の夫に借りもある。狩野が晴香に興味を持つのは、晴香が他人のものだから。晴香は理解していた。
もしかすると、狩野はいずれ、他の住民にも手を出すかもしれない。そして、他の住民も狩野に夢中になるかもしれない。それだけ狩野は魅力的なのだ。

晴香は自分の考えに悲しくなるが、仕方ないと最初から諦めていた。自分には狩野を繋ぎ止めることはできない。だから、せめて一緒にいる時は尽くしたい。そう思う晴香であった。

晴香はふと、キッチンにあるエプロンに目が止まる。いろいろ考えてしまったが、もうすぐ狩野が起きるかもしれない。雑念を振り払うように、頭を振ると、晴香はエプロンに手を伸ばした…。

そして、今、晴香は狩野と共に食事をしていた。他愛もない会話が続いていたが、狩野が大事な話を切り出してきた。

「さて、じゃあ…これからのことを少し話しておきたい…。俺ら二人の関係について…。」

「は、はい…。」

晴香は思わず居住まいを正す。どんなことを言われても受け入れようと覚悟を決める。

「まず…先に謝るが…すまない。晴香を抱いておいて…あれだが…俺は晴香に旦那さんと別れて俺のところに来いと言うつもりは…ない。」

晴香は狩野の言葉にそっと目を伏せる。覚悟していたこととは言え、ストレートに明言されるとツラい。しかし、逆にこれは狩野の優しさなのだと思う。中途半端に期待を持たせるようなことをしたくないのだろうと思う。

「晴香はすごく魅力的だが…、俺は種無しで子どもも作れない…。」
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