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タワマン〜墜ちた女達〜
第4章 1人目〜伊藤晴香〜
狩野は眉間にシワを寄せ、吐き出すように言う。晴香が思う以上に精子がないことに苦しんだのかもしれない。

「それがわかった時から俺は結婚しないことを決めた。自分で言うのもなんだが…かなりこれは根深くて…変えれそうもない。妊娠させられないことが逆に女性を粗雑に扱ってしまいそうになる…。だから、晴香も…俺と一緒になっても悲しむだけになる。」

「はい…。」

晴香は短く答える。狩野の言葉を否定したり、反論する気持ちはなかった。ただただ受け入れる。

「でも…今の俺は晴香を求めている…。だから…だから晴香を縛る…。壺の代金70万円で…。70万分、言うことを聞いてもらう…。いいな…?」

「はい…。構いません…。そのつもりです。孝宏さんに助けてもらわなければ、あの後どうなっていたか、わかりません。家庭はもっと酷くなっていたと思います…。だから…70万どころか…一生かけても償わせてください…。」

「一生償うなんて堅苦しく言わなくてもいいさ…。本当は縛るつもりなんてないから…。ただこうやって二人の時間が作れれば…。」

「わ、私で良ければ…。私の全部を差し出します…。」

「そう言ってくれると嬉しいよ…。」

話していることは、とんでもないことだが、二人の間には甘い空気が漂っている。

「ただ、互いに自制しないとね…。周りにバレるとやっかいだから…。」

「はい…。孝宏さんに迷惑かけないように気をつけます…。」

晴香は自分の不手際からこういう関係になった自覚はあるので、一層気をつけなければと思う。

「普段通りでいいよ…。あまり気を張ると怪しまれるから…。ただ会う回数とか、時間は決めておこう。基本、会うのは週2回から3回。曜日は決めない。固定すると怪しまれるから。」

「はい。時間は…?」

「そうだな…。時間も固定したくないが…。旦那さんの仕事は何時から何時まで?」

「だいたい…朝7時から…夜は早い時で21時、遅い時は0時を過ぎます。」

「じゃあ、会うのは朝9時から18時までの間で…。俺から呼び出すけど、家庭の方を優先。とにかくバレないように。」

「はい。わかりました。」

「会うのはここだけ。来る時は携帯ぐらいで。必要なものは俺が買うから…。なんか持ち込まむところ見られたら怪しまれるしね。」

「はい…。すみません。」

「気にしないで。金はあるから…。」
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